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ハーレム・ドラッグ第三章―9
「や・・・やった?」
「みたい、だね・・・」

 空那と風那が息を吐いて力を抜く。
 スカーレット・イーターは完全に滅びた。赤茶けた土塊のようになって路上に散乱している。

 何とか勝ったか・・・。

 ここで、ようやく救急車のサイレンの音が近づいてくるのが分かった。
 おせーっつーの!!
 ・・・いや、ここは戦闘に巻き込まなくて良かったと考えるべきか。

「結界が壊れたようですね。私たちも退散しましょう」
 そう言った白銀の少女が懐から何か取り出した。
 真っ白な、ジッポーライターのような四角い箱だ。
 それに力を込めると、パキッとL字型に折れた。
 折れた箇所から強い白銀の光が溢れだし、俺たちの体を照らし出す。
 ふらつく体で風那たちが合流し、同様に光を浴びたその時、地面が揺れた。

「グォ、ォ、ガアアァアァアァ・・・!!」
「あ、あいつ、まだ動けたの!?」

 風那の視線の先には、ロイドがいた。
 アスファルトに埋まった上半身を引き抜き、動かない両腕を垂らして月光を浴びて仁王立ちするその姿は、さながら全身に槍や刀を刺されながらも立ったまま死んだという、武蔵坊弁慶を彷彿とさせる姿だった。

「メイ、ンシステ、ム66%、ダウン。サブシ、ステム起、動、戦闘続、行不可、能と判、断し、撤退す、る」

 元からたどたどしかった言葉が、さらに怪しくなってる。
 風那にあれだけやられて、まだこれだけ自立行動ができるとは。
 頭なんか原形とどめてないってのに・・・今更だが、先生たちが来なかったらと想像してゾッとした。

 俺たちの見つめる前でロイドの体が宙に浮き、一気に加速して空へと上っていった。
 かなりふらついてるようだが、あれなら逃げおおせちまうだろう。

「チックショウ、とどめを刺しておくんだった・・・!」
「しょーがないよ、お姉ちゃん。孝一兄ちゃんたちを助けられただけでも良しとしなきゃ・・・う~気持ち悪い」
「そうですね。では研究室に転移しましょう、この方たちはもう大丈夫でしょうし」

 白銀の少女が本村さんたちを見る。
 確かに、救急車も近づいているし、ケガももう安心だしな。

「孝一様、これから空間転移を行います。少し体に負担がかかると思いますが、一瞬です。我慢して下さい」
「あ、ああ・・・、大丈夫だ。ゴホッ、けど、その前に・・・あのバイクも一緒に・・・」

 俺は、少し離れた所に止めてあるバイクに目をやった。
 あのバイクだけ残したら、百合香が関係してると思われちまう。

「ばいく・・・あの赤い乗り物ですね」

 言うやいなや、紅夜叉が少女の服から飛びだしてバイクに向かった。
 紅夜叉はクルクルとバイクに巻き付いて、バイクを軽々と持ち上げて俺たちの側まで運んで来ちまった。
 ・・・一瞬、ぶった切るのかと焦っちまった。
 しかし便利だね、こんな使い方もあるとは。

「では・・・、転移開始!」

 あの白い箱から白銀色の何かが飛びだした!
 そいつは高速で俺たちの周りを回りながら、繭のように包み込んでいく。
 ・・・なんか、メタリックなスライムが、体を伸ばしながら飛び回ってるみたいだ。

 周りを完全に囲まれた時、壁となったスライムが強く光った。
 思わず目を閉じると、全身への圧迫感が襲ってくる。
 が、それも一瞬で終わった。
 また壁が光ると、見た事もない景色が広がっていた。

 やたらにだだっ広い部屋で、土蔵の中のように感じたが、広さが半端じゃない。学校の体育館並の広さがある。
 その壁という壁にびっしりと棚が作られていて、それの上には所狭しと奇妙な物が並んでいる。
 目玉のついた徳利とか、頭から傘を生やしている鎧カブトとか、トゲだらけの木魚とか。

 ・・・何に使うんだ? って言うか、使える物なのかこれは。

 床の上にも似たような物がゴロゴロある。
 片隅に、一段高くなったスペースがあって畳が敷いてある。お座敷席みたいだ。
 そこには布団が二組折りたたんで置いてあった。
 泊まり込み用、かな。

「孝一様と気絶しているそちらの方は、そこの布団に寝かせましょう。まずはお二人の解毒を。そしてその女への処置を行いましょう。遠藤様は引き続き孝一様の治療をお願いします」
「分かったわ、・・・恵美をお願い」
「善処します」

 ここからは白銀の少女と風那、空那に任せっきりになった。
 解毒されて自由に動けるようになった二人が少女を手伝い、凍った氷室の服を脱がし(凍っていたので半分砕いたようなもんだが)、大きな水槽のような物の中に入れる。
 壁に設置されたレバーやらバルブをいじると、妙に粘り気のある不思議な光沢を放つ液体が水槽の中に流れ込んできた。
 さらに、妙にプニョプニョした黄やら赤やら紫の、こぶし大の固まりを中に投げ込んだ。

「後は待つだけです。結果が出るまで・・・五日間くらいですね」
「そう・・・。ありがとう」
「いえ、私は孝一様の命に従ったまでです」
「俺は頼みはしたけど、命令した覚えはないんだけどなあ・・・。とにかく、四人とも助けに来てくれてありがとう」

 俺は布団に横になったまま礼を言った。

「みんな無事で良かったわ」
「孝一兄ちゃん、後でご褒美ちょうだいね!」
「ご、ご褒美? うーむ、金は無いぞ」
「も~、お金なんか使わなくたって・・・」

 あの、空那さん? なんでそんな妖しげな瞳で私に近づいてくるのでしょうか。

「い~っぱい、可愛がってくれれば、それでい・い・の♪」

 チュッ。

 あ、キスされた。

「空那ちゃん、抜け駆けよぉ? 私もしちゃお、ん~♪」

 チュゥ~ッ。

 先生からもキスされた、やや長めに。

「ふ、二人ともズルイよぉ! 私もぉ!」

 チュ~ッ、チュッ、チュゥ~~ッ。

 む、強弱に変化をつけての三段攻撃か。やるな風那。
 それに、風那の性格が元に戻ってるみたいだな。良かった。
 ずっとあのままだと、ちょっと対応に困りそうだしな・・・。

「・・・孝ちゃん」

 ビクゥッ!!

 隣の布団から、幽鬼が百年越しの恨みを抱く相手を見つけたような声がした。
 恐る恐る顔を向けると・・・。
 あれ、百合香さん、笑っていらっしゃる?

「分かってるわよ、まだ勝負はついてないんだから。えーえー、分かってますとも。・・・だから、速やかに分かりやすく全部説明してね?」

 外見は天使の如く。
 内面は般若の如く。

 気のせいか百合香の髪の毛が揺らめいているような錯覚を感じつつ、さてどこから説明したもんかと、内心で頭を抱える俺であった。

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
Re: ハーレム・ドラッグ第三章―9
間隔短っっ!!!w

この短期間でのアップ&第三章の執筆完了お疲れ様です^^




風那は戦闘中の興奮状態とかだと極道のお嬢にクラスチェンジするのかな?w

てか、今度は百合香も別の意味でクラスチェンジしそうで怖いような楽しみなような・・・w

と、言うか孝一ラバーズ皆に甘え症が流行し始めてる気がするのは俺だけなのだろうか?w


>あの事
そうですか^^
では、そちらも楽しみにして待ってます^^


これからも応援してます^^。
2009/04/13(Mon) 23:21 | URL | sk | 【編集
どうも~更新お疲れ様です。
久しぶりのゆるり感がいいですね~
戦闘終わった感がちゃんと伝わってきます。
しかし百合香死にかけたのに…強いねぇ。
恋する女は強し…かな?
それではまた~
2009/04/15(Wed) 01:39 | URL | ソウシ | 【編集
Re: ハーレム・ドラッグ第三章―9
おお!
更新チェックを怠ってたら2つも更新されてる
これは嬉しい^^
2009/04/17(Fri) 01:08 | URL | ヒデ | 【編集
コメントありがとうございます
>>sk さん
風那は力を発揮すると問答無用でああなりますw
空那とは違い、肉体に直接作用するタイプの道具なので精神にも影響が出るのです。
百合香? さてどーなんでしょうw(ぉ
色々考えておりますです。


>>ソウシ さん
四天王の一角を崩す戦いでしたので、ちと長くなってしまいましたね。
自分でも、凄く久しぶりな感じでしたw
百合香の場合、想いをずーっと我慢して来たので、その反動で死にかけた事を頭の片隅に追いやってる感じでしょうかw


>>ヒデ さん
うはははははははははは、不定期すぎてすみません。
今抱えている諸問題が早く解決できれば、ペースも戻ると思うんですが・・・。
ドラゴンボールとか何処かに転がってませんかねぇw

2009/04/17(Fri) 21:50 | URL | HEKS | 【編集
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