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ハーレム・ドラッグ第四章―2
「それで孝ちゃん、誰と一緒に行くの? 一人じゃ絶対にダメよ」

 百合香が腕組みをしながら俺に言った。
 そりゃそうだ、俺はそこまで無謀じゃない。
 正直言えば、これ以上彼女たちを巻き込みたくはなかった。これは俺の問題なんだし。
 ・・・そう言ったら、全員が半分マジで怒ってたけどな・・・。

 俺に寄せる好意が嬉しいと同時に、ちょっと怖くもなった。
 これで、誰か一人にでも万が一の事が起こったら、と。
 事実、百合香はスカーレットに殺されかかってる。
 そうなったら俺は・・・立ち直れるだろうか。

「私も道具を貸して貰ったし、バイクで送りましょうか?」

 俺の迷いを切るように、百合香が微笑みながら言う。
 そうなのだ、百合香もこの戦いに参戦する事を決めたのだ。
 その為に、白銀の少女に道具を貸して貰ったそうだ。

 殺されかかったっていうのに・・・女は強いね。
 どんな力かはまだ教えて貰ってないが、まぁ、これで百合香は自分自身を守れるだろう。
 うーん、百合香のバイク・・・。
 ・・・さすがに街中は安全運転だろう、乗っけて貰うか。

「じゃ、百合香に頼むわ」
「ちぇ~、私も孝一兄ちゃんと行きたかったな~」
「う~ん、大勢の方が目立つからしょうがないか・・・」
「後藤君、何かあったらすぐに連絡入れるのよ?」
「分かってますって、すぐに戻ってくるから」

 皆が色々と言ってくる中、それをなだめる。

「気を付けてね、孝一クン」
「あ、はい」

 恵美・・・さんが、穏やかな表情で言った。
 うーむ、何か緊張する。
 俺たちは彼女の事を知らない事にしているから、名前を呼ぶ訳にはいかないのだ。

「帰ってきたら、一つお願いがあるの」
「お願い?」
「うん、私と彼女に名前を付けて欲しいの。いつまでも名無しさんじゃあね」

 恵美さんは、自分と白銀の少女の方を見て言った。
 彼女は分かるが、白銀の少女の名前まで?
 そういや、この子の名前を聞いてなかった事を思い出した。
 ・・・もしかして。
 俺は白銀の少女に聞いてみた。

「えっと・・・もしかして、キミは名前を付けて貰ってない、とか?」
「はい。主となった方に名付けて貰うよう、文十郎様に言われております」

 おいおい、生みの親が名付けてないって・・・。なに考えてんだ、ご先祖様よ。
 しかし、このままじゃ確かに不便だ。
 二人分の名前、考えてやらなきゃならんか。

「・・・分かった、考えておくよ」
「よろしくお願いします」
「お願いね、孝一クン」

 二人に頷いて、俺は百合香とバイクの側に移動した。

「じゃー、ちょっと行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」「気を付けてね」
「篠宮さん、しっかりね」
「お土産にプリンかショートケーキ希望ー」
「空ちゃんてば・・・。お兄ちゃん、百合香さん、行ってらっしゃい」

 皆の見送りを聞きながら、俺は転移を開始した。
 二人分の名前と、プリンかショートケーキのどちらを買おうかと考えながら。


 視界が晴れると、そこはあまりいい雰囲気とは言えない林の中だった。
 子供の頃に何度か見た、お稲荷さんの祠が木の陰から見えている。

「何度来ても、この林は気持ち悪いわ。孝ちゃん、早く行きましょ」
「あいよ」

 周りに注意しながら林を出ると、懐かしい町並みが広がっていた。
 爺さんと過ごした、あの町だ。
 昔からの住宅地で、新しい家と古い家が建ち並ぶ中、やたら長い白い壁が続く家がある。

 そこが俺がかつて住んでいた爺さんの家だ。
 今は、親父の弟に当たる叔父の一家が住んでいる。
 ぶっちゃけ、この叔父にいい感じはしねえ。
 爺さんの遺産相続問題で一番強欲だったのがこいつだ。
 今じゃろくに連絡も取ってないが、顔も見たくねえぜ。

「孝ちゃん?」
「あ、悪い。行こうか」

 俺は百合香の待つバイクのリアシートに乗った。
 メットを被ろうとした時だ。

「・・・ひっ!」

 正面から、小さな悲鳴のような声が聞こえた。
 何だと思って目を向けると、あの叔父がいやがった。
 げ、と思ったが、あちらは何故か顔面蒼白で俺の顔を凝視してる。
 そのまま逃げるように、今は自分の物となった家の中へと入って行っちまった。

「・・・変な人ね、孝ちゃんの知り合い?」
「ああ、俺の叔父さんだよ」

 にしても、何だあの挙動不審者みたいな行動は。
 まるで俺に怯えていたようだったが。
 ・・・あ、そういや俺の顔は今、文十郎さんの顔になってるんだっけ。
 て事は何か? あの叔父は文十郎さんに怯えてたのか? 何で?

 ・・・俺はメットを被ると、肩を竦めて軽く笑った。
 どーでもいいさ、あの叔父の事なんざ。
 俺は百合香の腰に腕を回すと体を固定し、明るく言った。

「ほんじゃ、安全運転で頼むぜ」
「あら、私はいつも安全運転よ?」

 この五分後、俺たちはアパートの前にいた。
 バスで約二十分かかる距離を、バイクとはいえ五分少々で・・・。
 言うまでもない事だが、バイクを降りた時、俺は全身が笑っていた。
 前回と同じじゃねーか!

「うーん、いつもよりセーブしたんだけど・・・」

 結論。
 この子、今すぐバイクレーサーになれます。
 オフロード・レースやっても上位に食い込むに違いない。

 取りあえず、秘伝書と貴重品、後は着替えを多少持って行くだけだから大して時間はかからないと判断し、メットを被ったまま行く事にした。
 やや千鳥足で部屋に向かい、ドアの前で鍵を取り出す。
 その時、俺の背中に何か固い物が押しつけられた。

「・・・動かないで」

 そーっと両腕を上げつつ後ろを覗くと、俺と百合香の背後に誰かが立っているのが見えた。
 百合香も俺と同じ状況のようだ。
 ・・・おいおい、いきなり襲撃かよ!?

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
百合香ちゃん
町中でそんなに飛ばしたら捕まっちゃうぜww

今回で百合香は場所を選ばないスピード狂だとバレてしまったw
お嬢様なのに…
世のお嬢様は実はスピード狂なのか?!

冗談はこれくらいにして、今回も楽しくて読ませてもらいました。

叔父さん、完全なウザキャラフラグです。
次回はフルぼっこですね
わかりますww
2009/05/20(Wed) 19:09 | URL | ヒデ | 【編集
また、いきなりまさかの襲撃フラグ!!??w

早速百合香の出番の予感!?

急襲してきた者は敵か味方か?

そしてその目的は?

そしてその正体は!?


息もつかせぬ急展開!

次回ハーレム・ドラッグ第四章3話をお楽しみに!!

・・・・・・
すみませんw
ちょっと遊び心で予告的なものをしてみてしまいましたw
まぁ、今回の感想はほぼこれなんですけどね^^

あとなんか、襲撃者から武蔵と佐助の様な職業匂いがしたりもしましたがw

毎度ご執筆御苦労様です。
これから暑くなってきますが、負けずに頑張ってください^^

では
2009/05/20(Wed) 23:55 | URL | sk | 【編集
どうも~更新お疲れ様です。
恵美は名前変えるのか…
前のことを考えると仕方ないんでしょうが。
せめて前の名前に関係あることからつけてほしいですね。
襲撃受けたみたいですがこれは…あの連中じゃないっぽいがはたして?
それではまた~
2009/05/21(Thu) 19:52 | URL | ソウシ | 【編集
コメントありがとうございます
>>ヒデ さん
百合香は峠の女王(クイーン)だったりしますからw
受けた勝負は数知れず、その上で無敗の女王ですw


>>sk さん
匂いですか、はて何の事やらw
百合香の能力は、スカーレットとの戦いで抱いたある想いが原因で考えついた物となっています。
後は、彼女の性格から来るものですね。


>>ソウシ さん
ホムンクルス娘と恵美の名前は、色々考えちゃいるんですが本採用がまだ無かったり。
ただ、やはり恵美の方は『恵美』に関係あるようにしたい所です。
人名辞典が必要かもw

2009/05/24(Sun) 09:03 | URL | HEKS | 【編集
最近は忙しいのでしょうか?
続き楽しみにしています。
2009/07/02(Thu) 13:45 | URL | ユウ | 【編集
うーん...
更新ないのかなあ?
2009/09/05(Sat) 02:20 | URL | ソウシ | 【編集
もう更新しないのですか?
2009/10/26(Mon) 08:40 | URL |  | 【編集
面白かった♪
すごく面白かったです!
一気に読んじゃいました

続き楽しみにしてます
2010/03/29(Mon) 01:54 | URL | ライ | 【編集
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