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ハーレム・ドラッグ第二章―34
 ――数時間後。
 俺と篠宮は再び移動して、とある場所までやって来ていた。
 まあ、それはいいんだ。
 問題は、移動手段がバイクだったってことだ。
 俺は篠宮の運転するバイク・・・ホンダの真っ赤なCB何とか、というバイクのケツに乗せられて来たのだ。
 400ccのエンジンを積んでるとかで、二人乗りで快調に飛ばして来た。

 正直、死ぬかと思った・・・!
 追い越しはしまくるわ、車と車の間を無理やりすり抜けるわ・・・。
 十台以上の車の間をアミダくじのように連続ですり抜けた時は、生きた心地がしなかったぜ・・・スピードをろくに落とさないんだもんよ。
 途中、道路脇のコンビニで小休止をした時には、俺は全身が笑ってしまっていた。

「だらしないわね、これくらいで。これでもセーブした方よ?」

 バイクと同じ真っ赤なライダースーツに身を包んだ篠宮の悪態に、言い返す気力も湧かなかったぜ・・・このスピード狂め!
 それにしても、バイクの免許まで持っていたとはな。今までとは違う篠宮の『顔』に、戸惑いっぱなしだぜ。

 そして、更に走ってたどり着いた場所。
 俺の生活圏から遠く離れたここを、俺はおぼろげに憶えていた。
 ここは・・・。

「あなたが、あなたのお爺さんに引き取られる前に住んでいた町よ・・・。憶えてる?」
「うっすらとは、な」

 俺が爺さんに引き取られる前・・・。つまり、俺の両親が事故で死ぬまでの間、過ごしていた町だ。
 この町にいたのは小学校3年生までだったし、両親が死んだことによるドタバタの方が強く記憶に残ってしまっていて、この町の事はあまりよく憶えていないのだ。

「しかし、何だってこの町へ連れてきたんだ?」
「・・・・・・」

 俺の問いに答えず、篠宮はバイクに向かって歩き出した。
 今、俺たちは整備された駅前に立っている。
 俺は軽く溜め息をついて、篠宮の後を追った。

 わずかな記憶を頼りに駅前を眺めるが、大分様変わりしていて見覚えがまるで無い光景ばかりだった。
 俺が暮らしていた頃はもっと静かな感じだったが、今は開発が進んでかなり賑やかになっているようだ。
 篠宮は無言でバイクに跨ると、シートの後ろを親指で指した。乗れってか。
 俺が肩をすくめて座るのを確認すると、篠宮はバイクを発進させた。

「今度はどこに行くんだよ?」

 信号待ちで停まった時に、俺は聞いてみた。

「着けば分かるわ」

 それだけ言うと、篠宮はまたダンマリになりやがった。
 まったく、何考えてんだ?
 篠宮は迷うことなく、バイクを走らせていく。よく知っている道、といった感じで。

(こいつ、この町に詳しいのか?)

 頭に浮かんだ疑問を、俺はかき消した。
 さっき篠宮は着けば分かると言った。なら付き合うさ。
 篠宮がマンションで『行きたい所があるからちょっと付き合って』と言ったときのあの表情は、今までにほとんど見たことが無いくらいの真剣なものだったからな。

 渋滞に巻き込まれることも無く、辿り着いたのは小学校だった。
 ここって、俺が通ってた小学校じゃねーか・・・。
 うぅむ、懐かしい。

「思い出した?」
「少しだけな。あ~、確かあそこに兎小屋が・・・おっ、あった! あっちには池が・・・お、残ってるな。うん、だんだん思い出してきたぜ。池の鯉を釣ろうとして、釣れたはいいけど力負けして池に落っこちたっけなぁ」
「・・・おバカ」
「うっせー。ガキの頃の可愛い思い出だ」
「・・・フフッ」

 お、やっと笑いやがった。
 篠宮はバイクをゆっくりと発進させると、学校の裏側に回りこんだ。
 学校から少し離れた場所・・・。そこには記憶通りに、小さな山があって、ちょっとした森が広がっていた。
 戦国時代に城が立っていたらしく、所々に石垣が残っていたりするような山だ。

「ここって、子供たちの格好の遊び場だったんだよなぁ。そうだ、友達と秘密基地とか作って、お菓子を持ち寄って・・・携帯ゲームで対戦してたっけ」
「それ、外で遊ぶ意味無いんじゃない?」
「わかってねーなあ。みんなと一緒に、携帯ゲーム機を外で遊ぶのが『通』なのさ」
「何を訳の分かんないこと言ってんだか」

 呆れたようにも見える微笑を浮かべながら、篠宮はバイクを山につながる道の脇に停めた。

「登るのか?」
「うん・・・」

 俺たちはバイクを降り、子供の頃に見たよりもずっと小さく感じる砂利道を登り始めた。
 十分ほど歩いた俺の視界に飛び込んできたのは、展望台のように町を一望できる広場だった。
 さすがに危ないからか、崖の縁には丸太の柵が設置されている。広場の隅には、これも丸太で作られたベンチが二つ並んでいた。

「あれ、この柵とかベンチ、昔は無かったような・・・」
「うちの土地になってから設置したのよ」
「ふぅん。・・・なぬ?」

 今、何か変なことを言わなかったか?

「うちの土地・・・、って言ったか?」
「ええ」

 あっさりうなずく篠宮さん。

「それって、つまり・・・」
「この山全部、今は篠宮家の所有なのよ。二年ほど前に買い取ったの」
「なにぃ!?」

 俺は思わず大声を上げてしまった。
 篠宮が顔をしかめて耳を押さえる。

「もう、いきなり大声出さないでよ」
「わ、わりい・・・。でも、何だってこの山を買い取ったりしたんだ? 特に利用価値があるようには見えないけど」
「・・・・・・」

 篠宮は夕焼けに照らされる町を眺めながら、口を閉ざした。
 何か言いたそうにしてるのが分かる・・・買い取った理由だろうか。
 開放して公園にするとか? いや、もう開放してるのか。秋にマツタケが採れる訳でもないし・・・。埋蔵金でも埋まってるとか? そんな話、聞いたことが無い。
 金持ちの考えることだ、俺の理解を超えた利用価値があるのかもしれんが、素人目に見ても有効利用できるようには見えん。

 と、篠宮が俺の方を向いた。
 何だか怖い顔をしてズンズンと近づいて来る。
 俺の眼前に立った篠宮は、俺の頭を両手でがっしりと挟み込むように・・・つ、掴まれた!?
 そのまま強引に、自分の顔に俺の顔を引き寄せて・・・。

 キスをされた。

「う・・・ぇ?」

 篠宮の体が震える。頭を掴んでいる手から、その震えが伝わってくる。

「まだ・・・」

 篠宮の瞳から、涙があふれて流れ出した。
 今まで一度も見たことのない、彼女の泣き顔だ。
 篠宮の両手がはなれ、それがライダースーツの胸の部分をぐっと握り締めた。

「まだ思い出してくれないのっ!? 『考ちゃん』のバカぁッ!!」

 篠宮が叫んだ。
 悲鳴に近いその声は、俺の脳裏にある女の子の姿を電光のように思い出させた・・・!

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
高速道路の二人乗りはそれなりの制限があるわけなのですが、そこを指摘するのは無粋ですかね?
2008/09/23(Tue) 09:59 | URL | クロガネ | 【編集
コメントありがとうございます
>>クロガネ さん

ぶっちゃけ・・・やっちまったぁ! という感じですorz
完全に調査不足でした。


以下、言い訳コーナー。↓

数年前に、高速道路でのバイクの二人乗りが解禁された、というニュースを聞いた覚えがあり、それであまり調べずに書いてしまったのでした。
指摘を受けて調べたら二人乗りが不可能なのは・・・。

●年齢20歳未満の方。
●大型二輪免許または普通二輪免許を受けた期間が3年未満の方。

・・・なんてこったいorz
どうあがいても百合香は二人乗り無理じゃん。

さぁてどうしたもんか・・・。

修正するのは簡単ですが、ちょっとみっともない感じがするし。
でも、間違っているものをアップし続けるのも、読んでくれている人たちに失礼かとも思う。

ひとまずこの第二章―34はこのままにしておいて、次回更新時に第二章―35と34の修正版をアップしてその旨をお知らせに書こうかと思っています。

ご指摘、本当にありがとうございました。
穴があったら入りたいとは正にこの事ですorz

2008/09/24(Wed) 16:41 | URL | HEKS | 【編集
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