2007年12月23日 (日)
俺の名前は後藤孝一(ごとう こういち)。
今までの人生はちょっとばっかり不幸ではあるが、そこら辺にいる、ごく普通の高校生だ。
成績は中の上、運動神経もそこそこ、顔は・・・これは自分で語るのはやめとこう。ラブレターを一回くらいは貰った事がある程度だ。
小学生の頃だけどな・・・。
俺が小学生の頃、両親が死んだ。
交通事故であっけなくだ。
この時は神様ってもんを心底憎んだね。
今までの人生はちょっとばっかり不幸ではあるが、そこら辺にいる、ごく普通の高校生だ。
成績は中の上、運動神経もそこそこ、顔は・・・これは自分で語るのはやめとこう。ラブレターを一回くらいは貰った事がある程度だ。
小学生の頃だけどな・・・。
俺が小学生の頃、両親が死んだ。
交通事故であっけなくだ。
この時は神様ってもんを心底憎んだね。
俺は父方の爺さんに引き取られて育ったが、その爺さんも昨年天寿をまっとうしていった。
ところがここからが酷かった。
爺さんの遺産はかなりの額があり、親族での遺産の取り合いで連日醜い争いが繰り広げられた訳だ。
爺さんが入院中に、ろくに見舞いに来なかったくせによ。
まだ小さかったいとこ達も親たちの言い争いに怯えてたっけ、酷いもんだった。
何も分からなかった俺にはろくな分配をされず、高校卒業まで必要な金だけを手に入れる事ができただけだった。
家も体良く追い出され、一人暮らしをする事にもなった。
ま、これは俺にとってもありがたかったけどね。
これであんな親戚連中と縁が切れるのなら、安いもんだって思ったのさ。
うちのご先祖様は相当な金持ちだったようで、爺さんの家は当時の趣きそのままの屋敷で無駄にだだっ広い。
庭には土蔵があったりして、昔から俺の格好の遊び場だった。
その頃、俺は親戚連中の争いから逃げる為によくここで暇を潰していた。
ある日例によって逃げ出した俺は土蔵へ向かった。中には俺が作った専用の小さなスペースがあり、そこで昼寝でもしようと思ったのだ。
そこで横になった瞬間、大きな揺れが体に感じられた。
地震だ! そう思った時、俺の眼前にはおかしな物が迫っていた。
それは、妙に古めかしいガラスの小瓶だった。
どこからか落下してきたそれは、途中で栓が外れてそのまま俺の口にダイビングしやがった。
ドロリとした得体の知れない青黒い液体が口の中に流れ込み、俺は思わずそいつを一気に飲み込んじまったのだ。
・・・不味かった・・・思いっきり。
例えるなら、採れたての重油にバニラエッセンスをたっぷりと混ぜ、さらに隠し味で腐ったお酢を入れたような味だ。
少しして冷静になり、慌ててすぐに吐き出そうとしたが、不思議な事に腹の中に残った感じがしない。
まるで一瞬で消化、吸収されてしまったようにだ。
一体何が落ちてきたのかと天井に目をやると、天井の一部からなにやら白い物が見えていた。
はしごを持ってきておっかなびっくり上って見てみると、柱の一部がくり抜かれて空洞になっていて、蓋をしていた板が外れていた。
そこに収められていたらしい白木の箱が横倒しになって蓋が開いていた。見えていたのはこの箱だ。
その中には、さっきのガラスの小瓶が収められていたらしい小さな窪みと、表紙に『運命改変薬秘伝』と書かれている一冊の古文書が入っていた。
パラパラと見ても、何が書いてあるのやらさっぱり分からなかった。
けれども、さっき飲んじまった気色悪い液体のことが気になったので、箱を元通りに柱の中に戻して古文書と空になった小瓶を持ち帰った。
それから忙しくなり、俺は屋敷を放り出されて一人暮らしをする事になった。
体が気にはなったが、特に異常もなかったので気にしない事にした。
・・・今思うと、結構いい加減だな俺・・・。
一人暮らしを始めてすぐ、バイトと学校の合間に辞書片手に必死こいて古文書の解読に取り掛かった。
すると驚くべき事が分かったのだ。
飲んじまった青黒い液体は『運命改変薬』という代物で、何か善行を行うことで自分にとって幸運に満ちた未来を進む事ができるようになるのだとか。
例えば、道に落ちていた財布を拾って交番に届けたとする。
落とし主が現れた場合、お礼といってもその一割を貰えるのがまぁ関の山だろう。
しかし、この薬を飲んだ者に限っては、そのお礼が何倍にもなって返って来るのだ。
・・・本当かぁ?
最初は俺もマジで眉に唾を付けたくなったが、読み進めていくうちに少しずつ信じる気になってきた。
これを作ったご先祖様は、明治時代の初期に奇妙な異人に出会い、一ヶ月ほど家に住まわせて面倒を見た。そのお礼に製法を教わったのだとか。
錬金術師と名乗っていたそうだが、とてつもなく胡散臭い。
しかし、ご先祖様はそいつを信じて実際に薬を作って自分で飲んだ。
それからご先祖様はやる事なす事全てが上手くいき、巨万の富を手に入れたんだと。
もっとも、その子孫達が殆ど食いつぶしちまってたけどね。
ご先祖様も危機感を持っていたのだろう。
この薬の事を子孫に伝えなかったのは、子孫が乱用するのを防ぐ為だと古文書の冒頭に書いてあったし。
確かに、こんなもんが強欲な人間に乱用されたら世の中とんでもない事になってるわな。
・・・うちの親戚どもに渡らなくて良かった。
翌日から、とにかく薬の効果が本当に現れるのか、実験してみる事にした。
何しろ古い代物だからなぁ・・・。
ま、古文書には薬の製法も書かれていたし、これが駄目なら自分で作るって手もあるさ。
まずは何か善行を行わなくちゃいけない訳だ。
ん、そういえば、明日は歴史の遠藤玲子(えんどう れいこ)先生の授業があったな。
いつも手作りの資料を重そうに持ってくるから、運ぶのを手伝ってあげる事にしよう。
上手くいくと決まった訳じゃないけど、どんな幸運が帰ってくるのか、楽しみだね。
ところがここからが酷かった。
爺さんの遺産はかなりの額があり、親族での遺産の取り合いで連日醜い争いが繰り広げられた訳だ。
爺さんが入院中に、ろくに見舞いに来なかったくせによ。
まだ小さかったいとこ達も親たちの言い争いに怯えてたっけ、酷いもんだった。
何も分からなかった俺にはろくな分配をされず、高校卒業まで必要な金だけを手に入れる事ができただけだった。
家も体良く追い出され、一人暮らしをする事にもなった。
ま、これは俺にとってもありがたかったけどね。
これであんな親戚連中と縁が切れるのなら、安いもんだって思ったのさ。
うちのご先祖様は相当な金持ちだったようで、爺さんの家は当時の趣きそのままの屋敷で無駄にだだっ広い。
庭には土蔵があったりして、昔から俺の格好の遊び場だった。
その頃、俺は親戚連中の争いから逃げる為によくここで暇を潰していた。
ある日例によって逃げ出した俺は土蔵へ向かった。中には俺が作った専用の小さなスペースがあり、そこで昼寝でもしようと思ったのだ。
そこで横になった瞬間、大きな揺れが体に感じられた。
地震だ! そう思った時、俺の眼前にはおかしな物が迫っていた。
それは、妙に古めかしいガラスの小瓶だった。
どこからか落下してきたそれは、途中で栓が外れてそのまま俺の口にダイビングしやがった。
ドロリとした得体の知れない青黒い液体が口の中に流れ込み、俺は思わずそいつを一気に飲み込んじまったのだ。
・・・不味かった・・・思いっきり。
例えるなら、採れたての重油にバニラエッセンスをたっぷりと混ぜ、さらに隠し味で腐ったお酢を入れたような味だ。
少しして冷静になり、慌ててすぐに吐き出そうとしたが、不思議な事に腹の中に残った感じがしない。
まるで一瞬で消化、吸収されてしまったようにだ。
一体何が落ちてきたのかと天井に目をやると、天井の一部からなにやら白い物が見えていた。
はしごを持ってきておっかなびっくり上って見てみると、柱の一部がくり抜かれて空洞になっていて、蓋をしていた板が外れていた。
そこに収められていたらしい白木の箱が横倒しになって蓋が開いていた。見えていたのはこの箱だ。
その中には、さっきのガラスの小瓶が収められていたらしい小さな窪みと、表紙に『運命改変薬秘伝』と書かれている一冊の古文書が入っていた。
パラパラと見ても、何が書いてあるのやらさっぱり分からなかった。
けれども、さっき飲んじまった気色悪い液体のことが気になったので、箱を元通りに柱の中に戻して古文書と空になった小瓶を持ち帰った。
それから忙しくなり、俺は屋敷を放り出されて一人暮らしをする事になった。
体が気にはなったが、特に異常もなかったので気にしない事にした。
・・・今思うと、結構いい加減だな俺・・・。
一人暮らしを始めてすぐ、バイトと学校の合間に辞書片手に必死こいて古文書の解読に取り掛かった。
すると驚くべき事が分かったのだ。
飲んじまった青黒い液体は『運命改変薬』という代物で、何か善行を行うことで自分にとって幸運に満ちた未来を進む事ができるようになるのだとか。
例えば、道に落ちていた財布を拾って交番に届けたとする。
落とし主が現れた場合、お礼といってもその一割を貰えるのがまぁ関の山だろう。
しかし、この薬を飲んだ者に限っては、そのお礼が何倍にもなって返って来るのだ。
・・・本当かぁ?
最初は俺もマジで眉に唾を付けたくなったが、読み進めていくうちに少しずつ信じる気になってきた。
これを作ったご先祖様は、明治時代の初期に奇妙な異人に出会い、一ヶ月ほど家に住まわせて面倒を見た。そのお礼に製法を教わったのだとか。
錬金術師と名乗っていたそうだが、とてつもなく胡散臭い。
しかし、ご先祖様はそいつを信じて実際に薬を作って自分で飲んだ。
それからご先祖様はやる事なす事全てが上手くいき、巨万の富を手に入れたんだと。
もっとも、その子孫達が殆ど食いつぶしちまってたけどね。
ご先祖様も危機感を持っていたのだろう。
この薬の事を子孫に伝えなかったのは、子孫が乱用するのを防ぐ為だと古文書の冒頭に書いてあったし。
確かに、こんなもんが強欲な人間に乱用されたら世の中とんでもない事になってるわな。
・・・うちの親戚どもに渡らなくて良かった。
翌日から、とにかく薬の効果が本当に現れるのか、実験してみる事にした。
何しろ古い代物だからなぁ・・・。
ま、古文書には薬の製法も書かれていたし、これが駄目なら自分で作るって手もあるさ。
まずは何か善行を行わなくちゃいけない訳だ。
ん、そういえば、明日は歴史の遠藤玲子(えんどう れいこ)先生の授業があったな。
いつも手作りの資料を重そうに持ってくるから、運ぶのを手伝ってあげる事にしよう。
上手くいくと決まった訳じゃないけど、どんな幸運が帰ってくるのか、楽しみだね。
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