2009年01月11日 (日)
・・・俺はどうなったんだ?
確か、夜中に暇潰しで仲間達と五人、学校に忍び込んで・・・。屋上で、赤い服を着た女に会ったんだ。
グラドルなんて目じゃねぇ、すげぇ美人だった。
そんで・・・そうそう、皆で犯っちまおうって事になったんだ。
あんな時間に学校に忍び込んでいたんだ、俺らと同様、まともじゃねぇに決まってる。
宿直の先公に気付かれないように、一気に襲い掛かって、押し倒して、服を破って、口の中にハンカチを突っ込んで口を塞いで・・・。
それでどうしたっけ?
ああ、そうだ、最初に俺が突っ込んだんだっけ。
ろくに濡れていない女に突っ込むのは、俺の趣味だ。
ギチギチに締め付けてくる感触が堪らないんだよな。
あの女も、すげぇ締め付けだった。
これまで何人かレイプしたけど、あんなマ○コは初めてだったな。
えぇとそれで・・・中にたっぷり出した後・・・。
仲間達が声を上げたんだ、悲鳴のような感じだったなぁ。
女も何か言ってたっけ・・・『美味しくないわねぇ』とか何とか。
それで・・・目の前が真っ赤になって・・・。
どうなったっけ?
・・・まぁいいか。
何か、体が動かないけど、どうでもいいや。
・・・ええと・・・。
俺、どうなったんだっけ?
確か、夜中に暇潰しで仲間達と五人、学校に忍び込んで・・・。屋上で、赤い服を着た女に会ったんだ。
グラドルなんて目じゃねぇ、すげぇ美人だった。
そんで・・・そうそう、皆で犯っちまおうって事になったんだ。
あんな時間に学校に忍び込んでいたんだ、俺らと同様、まともじゃねぇに決まってる。
宿直の先公に気付かれないように、一気に襲い掛かって、押し倒して、服を破って、口の中にハンカチを突っ込んで口を塞いで・・・。
それでどうしたっけ?
ああ、そうだ、最初に俺が突っ込んだんだっけ。
ろくに濡れていない女に突っ込むのは、俺の趣味だ。
ギチギチに締め付けてくる感触が堪らないんだよな。
あの女も、すげぇ締め付けだった。
これまで何人かレイプしたけど、あんなマ○コは初めてだったな。
えぇとそれで・・・中にたっぷり出した後・・・。
仲間達が声を上げたんだ、悲鳴のような感じだったなぁ。
女も何か言ってたっけ・・・『美味しくないわねぇ』とか何とか。
それで・・・目の前が真っ赤になって・・・。
どうなったっけ?
・・・まぁいいか。
何か、体が動かないけど、どうでもいいや。
・・・ええと・・・。
俺、どうなったんだっけ?
「・・・信じられんよ」
孝一たちが通う高校で起きた校舎破壊事件。
その現場に倒れていた五人の男が担ぎこまれた病院では、彼らの担当となった医師がCTスキャンの画像を見て唸っていた。
「まったくだな・・・。頭の中がスカスカなのに、どうして生きているんだ」
同僚の医師も、同じく眉を寄せて画像を睨みつけていた。
画像は頭蓋骨内の、脳を写したものだ。
そこには、本来あるはずの脳の一部が、虫にでも食われたかのように空白だらけだったのだ。
「生命維持に必要な部分だけを残して、脳細胞が失われるなんてあるのか?」
「聞いたこと無いよ。クロイッツフェルト・ヤコブ病とかでもスポンジ状になって萎縮はするが、そもそも失われたりはしない」
「だよなぁ・・・。眼球から視神経の間に軽い炎症を起こしてるようだが、関係あるのかな」
「俺に聞かないでくれ。この歳で知恵熱が出そうだ」
「うむ・・・。とにかく、体の方には問題は無いが、当面はNCU(脳神経外科集中治療室)からは動かせないな・・・」
これまで培ってきた医学的知識が及ばない奇妙な症状に、二人は同時に溜め息をつく。
脳細胞が失われているのだから、回復する事はまず有り得ない。その事実が更に溜め息を重くする。
これが、ある擬似生命体が眼球と視神経の僅かな隙間から頭蓋内に入り込み、脳細胞を食い散らしたのだと知ったら、彼らはどんな顔をするだろうか。
その擬似生命体の名は、『スカーレット・イーター(緋色の捕食者)』。
『特殊軟性オリハルコン』と同じく、錬金術師・ジェドが作り出した忌まわしい生命体。
常に飢えているそれの好物は、『人間』であった。
「くぅ、ひ、はう、んひあぁぁ・・・! お父、さまぁ・・・!」
ある、超高級ホテルの一室。
最上階とその下のフロアをすべて借り切った男のいる一室に、悩ましい声が満ちていた。
明かりを落とした部屋の中、ぶ厚いガラスに両手を付き、煌めく夜景を眺めながらアイシャは後ろから貫かれていた。
彼女を犯しているのは、大きな黒い影だった。
人の影が厚みを持ち、立ち上がったかのような漆黒の男だ。
赤ん坊の腕ほどもありそうな黒い怒張を、アイシャの性器に乱暴に突き入れ、膣内を我が物顔で荒らし回っている。
アイシャの顔は恍惚としつつも、強すぎる快感に涙と唾液、鼻水までも流れ出るままにしていた。
白人特有の白い肌を赤く染め、襲い来る荒い快楽に振り回されているのだ。
「ああ、ひぁ、また、まひゃ、ひィク、イっちゃ、う、も、もう、ゆるひて、お、父様ぁ・・・っ!」
「駄目だよアイシャ、これは罰なのだよ? お使い一つ満足に出来ない子には、お仕置きしなくてはな」
部屋の奥から、落ち着いた低い声が響く。
声の主は、革張りのソファに身を沈め、頬杖を付いてテレビのニュース番組を見ていた。
アイシャからはその人物の顔は影になり見えないが、声の感じから壮年の男のようだった。
アイシャを犯している影の足元は、光を無視してその人物の足元に繋がっている。
影は、この人物の影だったのだ。
「ひぃい、ィク、イ、っぃい~~~・・・っ!!」
何度目になるのか、全身を震わせてアイシャが絶頂に達した。
そんな事は関係無しに、影は彼女を犯し続ける。
もう二時間以上、アイシャはこうして犯され続けていた。
疲れようが、絶頂に達しようが、関係無しに。
「らめ、ひゃめぇぇ、いま、突ゅかないで・・・! 頭、が、壊れ、りゅ・・・ひぎぃ、ぐぅぅ~~っ!」
「アイシャ」
「は、はいっ・・・! な、ひぐっ、何でしょうか、おぶ・・・っ、お父、様・・・!」
散々に弄ばれて脳髄も蕩けきっているというのに、お父様と呼ぶ男の声に、僅かに正気を取り戻して返事をする。
それだけ、この男は彼女にとって大きな存在なのだ。
「分かっているね? かの秘薬を手に入れる事が出来れば、世の事象を意のままに出来る事を」
「は、はひっ! お、お父様にこそ、相応しっいぃ・・・、力です・・・っ!」
「そうなれば、お前をちゃんと愛してやることも出来るのだよ。・・・実の親子であっても、永遠の伴侶となる事が出来るのだ」
「はい・・・っ! あぁ、お父様っ・・・! 私は、ぐひぅっ、お父様と、おふっ! いつまでもぉ、どっ、どこまでも、いっ、一緒にぃ・・・っ! あぐひぃぃっ!」
「秘薬は既に飲まれてしまったが、メグミが秘本を持ち帰れば、そこから復元する事はできるだろう。・・・ふむ、念のためにロイドにメグミを手伝わせるか」
部屋の片隅で音も無く立っていたゴーレム、ロイドが金属音と共に首を巡らせて、アイシャを見る。
ロイドはアイシャが作ったゴーレムだ、故に命令できるのはアイシャだけなのである。
「ロ、ロイド、お父様の命令よ、ひぅっ、行きな、さい・・・くぅっ!」
「分かった」
全身から金属の擦れる音を立てながら、ロイドは部屋を出て行った。
「これで終わりだろう、伴侶はメグミに決定だな」
アイシャの顔が、目に見えて分かるほど血の気が引いて青ざめていった。
体の興奮を凌駕した絶望が、心を蝕んでいく。
「おっ! お父様っ! も、もう一度、もう一度、ひぃっ! チャンス、をっ! お願っいですぅっ!」
「では、もしもメグミがロイドの手を借りながらも失敗したら、もう一度お前に任せよう。分かったね?」
「そっ、そん、なぁ・・・ひはぁっ!!」
「嫌かね?」
「いっ、いえ・・・。分かり、ひっ、ました。あうっ、ぅぅぅ・・・!」
アイシャの目から、大粒の涙が溢れる。
これまで流していたのとは違う、悲しみの涙だ。
メグミの力はアイシャもよく知っているし、容赦というものをしない女だ。
間違いなく、秘本を手に入れてくるだろう。
そうなれば父の伴侶はメグミに決定する。あの女を母と呼ぶ事になるだろう。
この上もない、屈辱だった。
元々、父と共に行動していたのは自分だけだった。
メグミも、ガリアスも、ヴェインも、後から父の元に集った者たちだ。
父は自分だけのものだったのに・・・。いつしか、アイシャの心に敵愾心が燃えるようになった。
ガリアスとヴェインは男だった為にさほど気にしなかったが、メグミは別だった。
初めて会った時から、必要以上に父に纏わりつき、夜の相手も勤めていた。
実の父と分かっていたが、奪われたくない一心で処女を捧げ、何度も抱かれた。
競うように体を開き、少しでも喜んでもらう為に奉仕を学んだ
たとえメグミが父の伴侶となっても、側にいる事はできるだろう。
だが、それはアイシャにとって地獄の苦しみに等しいものだった。
「ふむ・・・それではこうしよう。明日の朝、私が起きるまでそうしていなさい。それまで耐え続ける事が出来たら、二度の失敗を忘れてあげよう」
「ひぃっ、え、あ、朝まで・・・っ!? くひぃぃっ! そ、そんな、無理・・・っ!」
アイシャを犯している影は、疲れる事は無いし、射精することも無い。一分一秒の休み無く、ひたすらアイシャを貫き続ける。
どう考えてても、無理な要求だった。
心の中に、絶望という暗雲が満ちていく
「私の事を愛しているというなら、耐えて見せなさい。私も、お前と共に生きたいのだよ? アイシャ」
『お前と共に』・・・。この一言が、アイシャの心に満ちつつあった絶望を吹き飛ばした。
「た・・・耐えます・・・っ! 耐えて、みせ、ますぅっ!」
「うむ。それでこそ私の愛娘だ。私はそろそろ休む、音を立てないようにするのだよ?」
「はっ、はひんっ! お、お休み、なさい・・・お父、様・・・っ!」
隣の寝室に消える父の姿を見送り、ドアが閉まるのを確認するとアイシャは声を漏らさぬように唇を噛んで、快感を堪えはじめた。
(耐えろ、耐えろ、耐えろ・・・! お父様の側に居ていいのは、私だけだっ・・・! その為に・・・、耐えろ・・・! 耐えろ・・・!)
唇を噛む力が増し、ぷつりと破れた。
傷口から血が滲んで小さな赤い玉ができ、体の揺れによって細い跡を残して顎を伝っていく。
朝まで、あと何時間あるのだろう?
アイシャはそんな事を考えつつ、嵐のような快感をひたすら耐えて続けていた。
「はぁ・・・、はぁ・・・、ぐ、ぅぅ・・・っ、はぁ・・・」
下水道の中を、よろめきながら歩く人影があった。
ボロボロに破れた紺色の和服を着た、あの白銀の少女である。
倶利伽羅竜の爆発に紛れて逃げ込んだのは、ガリアスの攻撃によって出来た穴だった。
下水道にまで達していた穴を通り、追撃を考えて一晩中下水道内を逃げ続けたのだ。
和服に縫いこまれた金色菩薩と紅夜叉がぼんやりと光を発し、暗い下水道を照らしている。
その中を、今にも倒れそうな足取りで歩く彼女の体もまた、傷だらけであった。
ガリアスによって校舎に押し付けられた顔や喉もそうだが、もっとも酷いのは首の後ろだ。
拘束を逃れる為に電撃で焼かれた皮膚を強引に剥がした為、肉が露出し、骨の一部が見えていた。
(私だけでは・・・、力が足りない・・・。孝一様を、お守りできない・・・!)
予想を上回る敵の戦力に、少女は焦っていた。
孝一が麻生と呼んでいた、忍者の末裔であるあの少女ならば即戦力になるだろうが、いくらなんでも一人では焼け石に水だ。
また、孝一が『干渉と改変の蛇』を自在に操れるならば恐れる物は何もないが、それも無理だ。あの力は強力すぎる故に制御が恐ろしく難しい。
だからこそ、自分が作り出されたのだ。
改変薬を飲んだ者が、その力を自在に操れるようになるまでの守護者として。
(他に見つけるしかない・・・、新たな守護者を・・・!)
そう思いつくが、彼女は不安だった。
共に孝一を守護するには、麻生と互角かそれ以上の力が必要だろう。
しかし、そんなに簡単に見つかるならば苦労はない。
一つ手はあるが、それもそう簡単にはいかないだろう。
孝一の守護を、その人達にも背負わせる事になってしまう・・・。が、そんな事は言っていられない状況だった。
「この辺りか・・・」
不意に立ち止まり、そう呟いた彼女は手近な梯子を上って地上を目指す。
そっとマンホールの蓋を開けると、朝の光が差し込み、少女の目を一瞬眩ませる。
安全を確認して外に出た彼女は、静かに蓋を戻すとアパートを見上げた。
そこは、孝一の住んでいるアパートの前だった。
孝一の前に姿を現す前、あらかじめ調べておいたのだ。
何とかして、麻生と連絡を取らなければならない。
無理にでも部屋に入り、電話番号でも住所でも入手しなければ。
震える足を叱咤し、アパートの階段を登って孝一の部屋を目指す。
そこには、先客が三人いた。
「そうなの、失敗してたハンバーグをねぇ・・・。さすが後藤君ね、優しいんだから」
「そうなんですよ~。その前からお姉ちゃんは、孝一兄ちゃんの事ばっかり・・・」
「もぉ~! 空ちゃんだってお兄ちゃんの事ばっかり話してたくせに!」
一人は孝一の通う高校の歴史の教師、遠藤玲子。
後は、このアパートの大家の孫娘で双子の姉妹、加納風那と空那である。
孝一が篠宮百合香と共に高級車で立ち去った後、話があると言って麻生夕紀は桐山さつきと一緒に帰って行った。
残ったこの三人がアパートにやって来たのは、玲子が明日の孝一の予定を調べる為だった。
携帯の番号とメールアドレスを書いた手紙に、戻ったら連絡をくれるように追記してポストに入れに来たのだ。
風那と空那は近くに住んでいる祖母に用があった為、それならば、という事で一緒に行動していたのである。
手紙をポストに入れ、さて帰ろうかと振り向いた三人が見たものは、全身傷だらけで泥まみれの、白銀の少女。
三人が目を奪われた瞬間、少女は力尽きたように倒れこんだ。
風那が小さな悲鳴を上げ、玲子が慌てて駆け寄った。
「あ、あなたどうしたの!? 大丈夫!?」
「あなた・・・方は、孝一様の、お知り合いですか・・・?」
「え、ええ・・・。あなたは、こ、孝一お兄ちゃんのお友達ですか・・・?」
風那の言葉に、少女は虚ろな目を凝らして三人を見る。
その瞳に、光が見えた。
この三人と孝一を繋ぐ、青白く光る細い糸が。
「あなた方は・・・! 孝一様に・・・!」
「ちょっと喋らないで、すぐに救急車を呼ぶから!」
少女は携帯で119番をかけようとする玲子を制し、無理に体を起こして孝一の部屋のドアにもたれかかった。
「無理しないで、横になっていた方が・・・」
「大丈夫です」
白銀の少女は、右手で自分の襟元を大きく開いた。
整った乳房が半分以上あらわになり、三人が目を丸くする。
少女は、右手の指先を自分の胸に押し当てて・・・。
そのまま、めり込ませた。
「ちょ、ちょっと!? 何して・・・っ!?」
「ゆ、指が・・・体に・・・!?」
少女の指先は、その体内に入り込んでいた。
接触部から白銀の血液が流れ出す。
それは重力に逆らい、空中を漂い始めた。まるで白銀の蛇のように。
白銀の蛇は急に動きを速めると、驚くべき速さで少女と玲子たち四人の周りを囲むように宙を疾走する。
「な、何!? 何!? 何これぇ!!」
「空ちゃぁん!」
「これは、一体・・・!」
パニック状態の三人の耳に、白銀の少女の声が届いた。
「力を、貸して下さい」
少女は身動き一つしていない。唇も動いていないというのに、その声は確かに聞こえた。
「ち、力って・・・?」
空那の声に、少女の声が再び届く。
「今、孝一様は正体不明の敵に狙われています」
「後藤君が? どういう事!?」
「お兄ちゃんがどうかしたの!?」
「・・・孝一様をお守りする為に、あなた達の力を貸して下さい。孝一様と繋がりを持ったあなた達の力を・・・」
『繋がり』・・・。それを聞いた三人は、思い当たって頬を染めた。
確かにこの三人は孝一と関係を持っている。肉体的にも、精神的にも。
「詳しいことは、後で説明いたします。文十郎様のお作りになった『地下錬金研究室』で」
話している間に、白銀の蛇は隙間無く四人を囲み、包み込んだ。
まるで繭のようになったそれが淡く光った瞬間・・・。
繭もろとも、四人の姿はこの場から消え失せていた。
何事も無かったかのように。
孝一たちが通う高校で起きた校舎破壊事件。
その現場に倒れていた五人の男が担ぎこまれた病院では、彼らの担当となった医師がCTスキャンの画像を見て唸っていた。
「まったくだな・・・。頭の中がスカスカなのに、どうして生きているんだ」
同僚の医師も、同じく眉を寄せて画像を睨みつけていた。
画像は頭蓋骨内の、脳を写したものだ。
そこには、本来あるはずの脳の一部が、虫にでも食われたかのように空白だらけだったのだ。
「生命維持に必要な部分だけを残して、脳細胞が失われるなんてあるのか?」
「聞いたこと無いよ。クロイッツフェルト・ヤコブ病とかでもスポンジ状になって萎縮はするが、そもそも失われたりはしない」
「だよなぁ・・・。眼球から視神経の間に軽い炎症を起こしてるようだが、関係あるのかな」
「俺に聞かないでくれ。この歳で知恵熱が出そうだ」
「うむ・・・。とにかく、体の方には問題は無いが、当面はNCU(脳神経外科集中治療室)からは動かせないな・・・」
これまで培ってきた医学的知識が及ばない奇妙な症状に、二人は同時に溜め息をつく。
脳細胞が失われているのだから、回復する事はまず有り得ない。その事実が更に溜め息を重くする。
これが、ある擬似生命体が眼球と視神経の僅かな隙間から頭蓋内に入り込み、脳細胞を食い散らしたのだと知ったら、彼らはどんな顔をするだろうか。
その擬似生命体の名は、『スカーレット・イーター(緋色の捕食者)』。
『特殊軟性オリハルコン』と同じく、錬金術師・ジェドが作り出した忌まわしい生命体。
常に飢えているそれの好物は、『人間』であった。
「くぅ、ひ、はう、んひあぁぁ・・・! お父、さまぁ・・・!」
ある、超高級ホテルの一室。
最上階とその下のフロアをすべて借り切った男のいる一室に、悩ましい声が満ちていた。
明かりを落とした部屋の中、ぶ厚いガラスに両手を付き、煌めく夜景を眺めながらアイシャは後ろから貫かれていた。
彼女を犯しているのは、大きな黒い影だった。
人の影が厚みを持ち、立ち上がったかのような漆黒の男だ。
赤ん坊の腕ほどもありそうな黒い怒張を、アイシャの性器に乱暴に突き入れ、膣内を我が物顔で荒らし回っている。
アイシャの顔は恍惚としつつも、強すぎる快感に涙と唾液、鼻水までも流れ出るままにしていた。
白人特有の白い肌を赤く染め、襲い来る荒い快楽に振り回されているのだ。
「ああ、ひぁ、また、まひゃ、ひィク、イっちゃ、う、も、もう、ゆるひて、お、父様ぁ・・・っ!」
「駄目だよアイシャ、これは罰なのだよ? お使い一つ満足に出来ない子には、お仕置きしなくてはな」
部屋の奥から、落ち着いた低い声が響く。
声の主は、革張りのソファに身を沈め、頬杖を付いてテレビのニュース番組を見ていた。
アイシャからはその人物の顔は影になり見えないが、声の感じから壮年の男のようだった。
アイシャを犯している影の足元は、光を無視してその人物の足元に繋がっている。
影は、この人物の影だったのだ。
「ひぃい、ィク、イ、っぃい~~~・・・っ!!」
何度目になるのか、全身を震わせてアイシャが絶頂に達した。
そんな事は関係無しに、影は彼女を犯し続ける。
もう二時間以上、アイシャはこうして犯され続けていた。
疲れようが、絶頂に達しようが、関係無しに。
「らめ、ひゃめぇぇ、いま、突ゅかないで・・・! 頭、が、壊れ、りゅ・・・ひぎぃ、ぐぅぅ~~っ!」
「アイシャ」
「は、はいっ・・・! な、ひぐっ、何でしょうか、おぶ・・・っ、お父、様・・・!」
散々に弄ばれて脳髄も蕩けきっているというのに、お父様と呼ぶ男の声に、僅かに正気を取り戻して返事をする。
それだけ、この男は彼女にとって大きな存在なのだ。
「分かっているね? かの秘薬を手に入れる事が出来れば、世の事象を意のままに出来る事を」
「は、はひっ! お、お父様にこそ、相応しっいぃ・・・、力です・・・っ!」
「そうなれば、お前をちゃんと愛してやることも出来るのだよ。・・・実の親子であっても、永遠の伴侶となる事が出来るのだ」
「はい・・・っ! あぁ、お父様っ・・・! 私は、ぐひぅっ、お父様と、おふっ! いつまでもぉ、どっ、どこまでも、いっ、一緒にぃ・・・っ! あぐひぃぃっ!」
「秘薬は既に飲まれてしまったが、メグミが秘本を持ち帰れば、そこから復元する事はできるだろう。・・・ふむ、念のためにロイドにメグミを手伝わせるか」
部屋の片隅で音も無く立っていたゴーレム、ロイドが金属音と共に首を巡らせて、アイシャを見る。
ロイドはアイシャが作ったゴーレムだ、故に命令できるのはアイシャだけなのである。
「ロ、ロイド、お父様の命令よ、ひぅっ、行きな、さい・・・くぅっ!」
「分かった」
全身から金属の擦れる音を立てながら、ロイドは部屋を出て行った。
「これで終わりだろう、伴侶はメグミに決定だな」
アイシャの顔が、目に見えて分かるほど血の気が引いて青ざめていった。
体の興奮を凌駕した絶望が、心を蝕んでいく。
「おっ! お父様っ! も、もう一度、もう一度、ひぃっ! チャンス、をっ! お願っいですぅっ!」
「では、もしもメグミがロイドの手を借りながらも失敗したら、もう一度お前に任せよう。分かったね?」
「そっ、そん、なぁ・・・ひはぁっ!!」
「嫌かね?」
「いっ、いえ・・・。分かり、ひっ、ました。あうっ、ぅぅぅ・・・!」
アイシャの目から、大粒の涙が溢れる。
これまで流していたのとは違う、悲しみの涙だ。
メグミの力はアイシャもよく知っているし、容赦というものをしない女だ。
間違いなく、秘本を手に入れてくるだろう。
そうなれば父の伴侶はメグミに決定する。あの女を母と呼ぶ事になるだろう。
この上もない、屈辱だった。
元々、父と共に行動していたのは自分だけだった。
メグミも、ガリアスも、ヴェインも、後から父の元に集った者たちだ。
父は自分だけのものだったのに・・・。いつしか、アイシャの心に敵愾心が燃えるようになった。
ガリアスとヴェインは男だった為にさほど気にしなかったが、メグミは別だった。
初めて会った時から、必要以上に父に纏わりつき、夜の相手も勤めていた。
実の父と分かっていたが、奪われたくない一心で処女を捧げ、何度も抱かれた。
競うように体を開き、少しでも喜んでもらう為に奉仕を学んだ
たとえメグミが父の伴侶となっても、側にいる事はできるだろう。
だが、それはアイシャにとって地獄の苦しみに等しいものだった。
「ふむ・・・それではこうしよう。明日の朝、私が起きるまでそうしていなさい。それまで耐え続ける事が出来たら、二度の失敗を忘れてあげよう」
「ひぃっ、え、あ、朝まで・・・っ!? くひぃぃっ! そ、そんな、無理・・・っ!」
アイシャを犯している影は、疲れる事は無いし、射精することも無い。一分一秒の休み無く、ひたすらアイシャを貫き続ける。
どう考えてても、無理な要求だった。
心の中に、絶望という暗雲が満ちていく
「私の事を愛しているというなら、耐えて見せなさい。私も、お前と共に生きたいのだよ? アイシャ」
『お前と共に』・・・。この一言が、アイシャの心に満ちつつあった絶望を吹き飛ばした。
「た・・・耐えます・・・っ! 耐えて、みせ、ますぅっ!」
「うむ。それでこそ私の愛娘だ。私はそろそろ休む、音を立てないようにするのだよ?」
「はっ、はひんっ! お、お休み、なさい・・・お父、様・・・っ!」
隣の寝室に消える父の姿を見送り、ドアが閉まるのを確認するとアイシャは声を漏らさぬように唇を噛んで、快感を堪えはじめた。
(耐えろ、耐えろ、耐えろ・・・! お父様の側に居ていいのは、私だけだっ・・・! その為に・・・、耐えろ・・・! 耐えろ・・・!)
唇を噛む力が増し、ぷつりと破れた。
傷口から血が滲んで小さな赤い玉ができ、体の揺れによって細い跡を残して顎を伝っていく。
朝まで、あと何時間あるのだろう?
アイシャはそんな事を考えつつ、嵐のような快感をひたすら耐えて続けていた。
「はぁ・・・、はぁ・・・、ぐ、ぅぅ・・・っ、はぁ・・・」
下水道の中を、よろめきながら歩く人影があった。
ボロボロに破れた紺色の和服を着た、あの白銀の少女である。
倶利伽羅竜の爆発に紛れて逃げ込んだのは、ガリアスの攻撃によって出来た穴だった。
下水道にまで達していた穴を通り、追撃を考えて一晩中下水道内を逃げ続けたのだ。
和服に縫いこまれた金色菩薩と紅夜叉がぼんやりと光を発し、暗い下水道を照らしている。
その中を、今にも倒れそうな足取りで歩く彼女の体もまた、傷だらけであった。
ガリアスによって校舎に押し付けられた顔や喉もそうだが、もっとも酷いのは首の後ろだ。
拘束を逃れる為に電撃で焼かれた皮膚を強引に剥がした為、肉が露出し、骨の一部が見えていた。
(私だけでは・・・、力が足りない・・・。孝一様を、お守りできない・・・!)
予想を上回る敵の戦力に、少女は焦っていた。
孝一が麻生と呼んでいた、忍者の末裔であるあの少女ならば即戦力になるだろうが、いくらなんでも一人では焼け石に水だ。
また、孝一が『干渉と改変の蛇』を自在に操れるならば恐れる物は何もないが、それも無理だ。あの力は強力すぎる故に制御が恐ろしく難しい。
だからこそ、自分が作り出されたのだ。
改変薬を飲んだ者が、その力を自在に操れるようになるまでの守護者として。
(他に見つけるしかない・・・、新たな守護者を・・・!)
そう思いつくが、彼女は不安だった。
共に孝一を守護するには、麻生と互角かそれ以上の力が必要だろう。
しかし、そんなに簡単に見つかるならば苦労はない。
一つ手はあるが、それもそう簡単にはいかないだろう。
孝一の守護を、その人達にも背負わせる事になってしまう・・・。が、そんな事は言っていられない状況だった。
「この辺りか・・・」
不意に立ち止まり、そう呟いた彼女は手近な梯子を上って地上を目指す。
そっとマンホールの蓋を開けると、朝の光が差し込み、少女の目を一瞬眩ませる。
安全を確認して外に出た彼女は、静かに蓋を戻すとアパートを見上げた。
そこは、孝一の住んでいるアパートの前だった。
孝一の前に姿を現す前、あらかじめ調べておいたのだ。
何とかして、麻生と連絡を取らなければならない。
無理にでも部屋に入り、電話番号でも住所でも入手しなければ。
震える足を叱咤し、アパートの階段を登って孝一の部屋を目指す。
そこには、先客が三人いた。
「そうなの、失敗してたハンバーグをねぇ・・・。さすが後藤君ね、優しいんだから」
「そうなんですよ~。その前からお姉ちゃんは、孝一兄ちゃんの事ばっかり・・・」
「もぉ~! 空ちゃんだってお兄ちゃんの事ばっかり話してたくせに!」
一人は孝一の通う高校の歴史の教師、遠藤玲子。
後は、このアパートの大家の孫娘で双子の姉妹、加納風那と空那である。
孝一が篠宮百合香と共に高級車で立ち去った後、話があると言って麻生夕紀は桐山さつきと一緒に帰って行った。
残ったこの三人がアパートにやって来たのは、玲子が明日の孝一の予定を調べる為だった。
携帯の番号とメールアドレスを書いた手紙に、戻ったら連絡をくれるように追記してポストに入れに来たのだ。
風那と空那は近くに住んでいる祖母に用があった為、それならば、という事で一緒に行動していたのである。
手紙をポストに入れ、さて帰ろうかと振り向いた三人が見たものは、全身傷だらけで泥まみれの、白銀の少女。
三人が目を奪われた瞬間、少女は力尽きたように倒れこんだ。
風那が小さな悲鳴を上げ、玲子が慌てて駆け寄った。
「あ、あなたどうしたの!? 大丈夫!?」
「あなた・・・方は、孝一様の、お知り合いですか・・・?」
「え、ええ・・・。あなたは、こ、孝一お兄ちゃんのお友達ですか・・・?」
風那の言葉に、少女は虚ろな目を凝らして三人を見る。
その瞳に、光が見えた。
この三人と孝一を繋ぐ、青白く光る細い糸が。
「あなた方は・・・! 孝一様に・・・!」
「ちょっと喋らないで、すぐに救急車を呼ぶから!」
少女は携帯で119番をかけようとする玲子を制し、無理に体を起こして孝一の部屋のドアにもたれかかった。
「無理しないで、横になっていた方が・・・」
「大丈夫です」
白銀の少女は、右手で自分の襟元を大きく開いた。
整った乳房が半分以上あらわになり、三人が目を丸くする。
少女は、右手の指先を自分の胸に押し当てて・・・。
そのまま、めり込ませた。
「ちょ、ちょっと!? 何して・・・っ!?」
「ゆ、指が・・・体に・・・!?」
少女の指先は、その体内に入り込んでいた。
接触部から白銀の血液が流れ出す。
それは重力に逆らい、空中を漂い始めた。まるで白銀の蛇のように。
白銀の蛇は急に動きを速めると、驚くべき速さで少女と玲子たち四人の周りを囲むように宙を疾走する。
「な、何!? 何!? 何これぇ!!」
「空ちゃぁん!」
「これは、一体・・・!」
パニック状態の三人の耳に、白銀の少女の声が届いた。
「力を、貸して下さい」
少女は身動き一つしていない。唇も動いていないというのに、その声は確かに聞こえた。
「ち、力って・・・?」
空那の声に、少女の声が再び届く。
「今、孝一様は正体不明の敵に狙われています」
「後藤君が? どういう事!?」
「お兄ちゃんがどうかしたの!?」
「・・・孝一様をお守りする為に、あなた達の力を貸して下さい。孝一様と繋がりを持ったあなた達の力を・・・」
『繋がり』・・・。それを聞いた三人は、思い当たって頬を染めた。
確かにこの三人は孝一と関係を持っている。肉体的にも、精神的にも。
「詳しいことは、後で説明いたします。文十郎様のお作りになった『地下錬金研究室』で」
話している間に、白銀の蛇は隙間無く四人を囲み、包み込んだ。
まるで繭のようになったそれが淡く光った瞬間・・・。
繭もろとも、四人の姿はこの場から消え失せていた。
何事も無かったかのように。
はじめましてヒデ、というものです
いつも、楽しく読ませていただいてます
今回はついに敵の頭が登場しましたね
世界を意のままにしようとか、いかにも悪役でグッドですww
いつも、楽しく読ませていただいてます
今回はついに敵の頭が登場しましたね
世界を意のままにしようとか、いかにも悪役でグッドですww
2009/01/11(Sun) 23:35 | URL | ヒデ | 【編集】
お疲れ様です。
敵さん親玉エロシーンで初登場…やってくれる!
あ~…こうきたか~!
どう考えても彼女等戦闘能力ないから今後どうするかと思ってましたが…さてどんな能力?もつのか楽しみです。
それでは~♪
敵さん親玉エロシーンで初登場…やってくれる!
あ~…こうきたか~!
どう考えても彼女等戦闘能力ないから今後どうするかと思ってましたが…さてどんな能力?もつのか楽しみです。
それでは~♪
2009/01/12(Mon) 02:05 | URL | ソウシ | 【編集】
どうも、ご執筆御苦労さまです。
夕紀とさつきは確かに戦力として自分も考えていましたが、
まさか他の孝一ラバーズまで戦力にするとは。
すみません、今日は眠気に勝てぬので、今回はちょっとコメント少なめで勘弁願います。
第三章の執筆もがんばってください。
夕紀とさつきは確かに戦力として自分も考えていましたが、
まさか他の孝一ラバーズまで戦力にするとは。
すみません、今日は眠気に勝てぬので、今回はちょっとコメント少なめで勘弁願います。
第三章の執筆もがんばってください。
2009/01/12(Mon) 23:18 | URL | sk | 【編集】
>>ヒデ さん
ようこそ、ピンク色の煩悩の世界へw(ぉ
さて、この頭はどういう奴なんでしょうか。
根っからの外道か、同情すべき過去を持つ悲しい奴か、はたまた何にも考えていない脳天気さんかw
脳天気なのに超強力なラスボス・・・。
・・・何かイヤですねw
>>ソウシ さん
今まで活躍してなかった三人に、光を浴びせてあげたかったのですよ。
まぁ、集中的に孝一のアレを浴びせても良かったんですが(ぉ
他の二人とバランスが取れなくなりそうなので断念w
三人がどうなるか色々考えてますが、こういうのを考える作業が結構楽しかったりします。
>>sk さん
夕紀とさつきは、インターミッション―3でほにゃららの予定。
恐らく、ほとんどこの二人しか出て来ないでしょう。あくまで予定ですが。
あ、コメントは暇な時&気が向いたらで構いませんからね、お気になさらずに。
ようこそ、ピンク色の煩悩の世界へw(ぉ
さて、この頭はどういう奴なんでしょうか。
根っからの外道か、同情すべき過去を持つ悲しい奴か、はたまた何にも考えていない脳天気さんかw
脳天気なのに超強力なラスボス・・・。
・・・何かイヤですねw
>>ソウシ さん
今まで活躍してなかった三人に、光を浴びせてあげたかったのですよ。
まぁ、集中的に孝一のアレを浴びせても良かったんですが(ぉ
他の二人とバランスが取れなくなりそうなので断念w
三人がどうなるか色々考えてますが、こういうのを考える作業が結構楽しかったりします。
>>sk さん
夕紀とさつきは、インターミッション―3でほにゃららの予定。
恐らく、ほとんどこの二人しか出て来ないでしょう。あくまで予定ですが。
あ、コメントは暇な時&気が向いたらで構いませんからね、お気になさらずに。
2009/01/13(Tue) 22:00 | URL | HEKS | 【編集】
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