2008年07月21日 (月)
「ずずっ・・・。ふぃ~、やっと落ち着いたなぁ」
俺の部屋で麻生の入れてくれたお茶を一気飲みし、二杯目のお茶をすすってようやく落ち着いた俺は、何故麻生が公園に現れたのかを聞いてみた。
俺の部屋に少し早く着いた彼女は、麻婆豆腐に使う豆板醤を忘れていた事に気付き、近所のスーパーに買いに行った帰り道に現場に出くわしたらしい。
あのまま何事も無ければ、俺が帰った後でアパートで合流していた事になるな。
何ともタイミングの悪い話だ。
ちなみに、麻生が自宅で下拵えして持ってきていた料理は、玄関横の洗濯機の中に入れてあった。
「何にせよ、麻生が来てくれたお蔭で助かったぜ。ありがとう」
「い、いいえ~。うわ、照れるなぁ」
照れて赤くなってる麻生は何とも可愛らしかった。
このまま、まったりタイムといきたい所だが、そうもいかんわな。
俺の部屋で麻生の入れてくれたお茶を一気飲みし、二杯目のお茶をすすってようやく落ち着いた俺は、何故麻生が公園に現れたのかを聞いてみた。
俺の部屋に少し早く着いた彼女は、麻婆豆腐に使う豆板醤を忘れていた事に気付き、近所のスーパーに買いに行った帰り道に現場に出くわしたらしい。
あのまま何事も無ければ、俺が帰った後でアパートで合流していた事になるな。
何ともタイミングの悪い話だ。
ちなみに、麻生が自宅で下拵えして持ってきていた料理は、玄関横の洗濯機の中に入れてあった。
「何にせよ、麻生が来てくれたお蔭で助かったぜ。ありがとう」
「い、いいえ~。うわ、照れるなぁ」
照れて赤くなってる麻生は何とも可愛らしかった。
このまま、まったりタイムといきたい所だが、そうもいかんわな。
「あ~それでだな、何でこんな事になったかと言うと・・・」
俺は覚悟を決めて改変薬の事を話すことにした。
下手に隠して後でややこしい事になるのも嫌だしな。
が、麻生の返事は俺の予想には無いものだった。
「まだ説明はいいですよ、あの和服さんが帰って来てからで」
「へ?」
「和服さんには言ったけど、私も歴史の裏側を歩いてきた一族の末裔ですから、先祖の事は色々と知られたくない事もあります。それは先輩も同じでしょ? どうも、ご先祖様の関係みたいだし」
「あ、ああ・・・」
「整理する時間も必要でしょうから、彼女が帰って来てからでいいですよ」
「・・・いいのか? それで」
「はい」
ニコッと笑ってお茶をすする麻生は、いつもと違って落ち着いた雰囲気を出していて・・・大人っぽく見えた。
正直、胸がドキッとしたぜ。
俺は頭を下げて、麻生に礼を言った。
「分かった、その言葉に甘えさせてもらう。ありがとう、麻生」
「いえいえ。今日の先輩にはもっと大切な事がありますし」
「大切?」
頭を上げた俺の目に映ったのは、いきなり服を脱ぎだした麻生の姿だった。
「お、おい!? 何してんだよ!?」
「え、とりあえずご飯、作ろうかと」
「それで服を脱ぐのは何故!?」
「裸エプロン、嫌いですか?」
麻生は洗濯機の中に料理と一緒に入っていた荷物の中から、ピンク色が妙に目に刺さるエプロンを引っ張り出した。
何が入ってるのかと思ったら・・・。
「今日の為に新しく買ったんです。小さめのサイズだから、胸元もよく見えますよ~」
さっきの大人びた雰囲気はどこへやら、実に楽しそうにエプロンを見せながら俺に微笑む麻生であった。
一瞬、全裸でこれを身に着けた麻生を妄想してしまった・・・。イカン、我がジュニアが反応を。
落ち着け俺、色即是空、空即是色。
「き、気持ちは嬉しいんだけどな、普通に作ってくれればいいから」
「そうですかあ? 先輩がそれでいいなら・・・」
何故そんなに残念そうな顔をする、そんなにしたかったのか、裸エプロン。
嫌いじゃないぞ。むしろ嬉しい。やってくれると言うならぜひお願いしたい所だ。・・・普段ならな。
「ほら、今夜は色々あったからさ。できれば落ち着いて食いたいんだよ、ウン。それに食事前からそんな悩殺光景見せつけられたら、せっかくの料理なのに味も分からなくなりそうだし」
しょんぼりした麻生に、慌ててフォローを入れる。
「・・・そうですね。じゃあ、裸エプロンは次の機会にって事で」
やってみたいんだな、裸エプロン・・・。
服を着直してピンクのエプロンをつけた麻生は、そのまま台所へと向かった。
「それじゃ先輩、台所お借りしますね」
「ああ。・・・っと、それはそうと体の方は大丈夫なのか?」
麻生の背に声を掛けた。
「全然平気ですよ! あの外人さんの攻撃、かすりもしませんでしたから」
麻生は腕まくりした二の腕を、もう片方の手で抑えてニカッと笑った。
はは、大したもんだよ、まったく!
麻生の作ってくれた料理は、麻婆豆腐と五目あんかけ炒飯だった。
これがまた中々に美味い。
店に出せるレベル・・・と言ったら褒め過ぎかもしれないが、俺的にはそれ位の味だったのだ。
「しかし、麻生が忍者の子孫だったとはなぁ・・・」
炒飯を頬張りつつ、俺は思わず呟いて、後悔した。
麻生はさっき、『先祖の事は色々と知られたくない事もある』って言ってたよな・・・失敗した。
「あ、悪い! 麻生にも色々事情があるもんな」
「クス、少し位ならいいですよ」
額にうっすらと汗を掻きながら、麻婆豆腐をパクついている麻生が笑った。
「私の先祖は藤林長門守といって、織田信長の伊賀攻めの時に女子供を中心に一族の者を逃がしたんだそうです」
「ああ、伊賀攻めなら知ってるぜ。忍者の力を警戒した信長が攻めたとか何とか」
「ええ。その際に長門守は、『麻生』と名乗って一般人に混じって生き延びるように言ったそうです。『麻』の中の『林』は藤林の林の意味で、これから『生』まれてくる藤林の子孫を家の中に隠し、生き長らえるようにとの願いをこめて」
「へええ・・・」
『信長の伊賀攻め』・・・漫画とかでよく使われる話なだけに、話としちゃ知ってたけど、そんな裏話もあったとはなぁ。
長門守がこめた願いの強さが、何となく伝わってくる感じだぜ。
「長門守は伊賀の上忍でしたけど、甲賀忍者にも配下がいて、少数の甲賀忍者がその時一緒に脱出したそうです」
「甲賀忍者が?」
「ええ。無事に逃げる事が出来た藤林の者と、その甲賀忍者たちはその後も助け合って生き延びて・・・そんな中、長門守の直系と甲賀忍者の女性が結婚したそうです。それが私の直接の先祖なんですよ」
「ほえぇ・・・。そりゃ、ちょっとロマンチックだな」
「あ、先輩もそう思います? 私もこの話をお婆ちゃんに聞いた時はちょっとホロリとしちゃいました」
嬉しそうに言う麻生に、俺も微笑んで頷いた。
確か、伊賀攻めが終わった後も信長の忍者狩りは続いて、かなりの数の忍者が殺されたとか。
見つかれば命は無い・・・。そんな状況で助け合っていた人が惹かれあうのは不思議じゃないよな。
俺は覚悟を決めて改変薬の事を話すことにした。
下手に隠して後でややこしい事になるのも嫌だしな。
が、麻生の返事は俺の予想には無いものだった。
「まだ説明はいいですよ、あの和服さんが帰って来てからで」
「へ?」
「和服さんには言ったけど、私も歴史の裏側を歩いてきた一族の末裔ですから、先祖の事は色々と知られたくない事もあります。それは先輩も同じでしょ? どうも、ご先祖様の関係みたいだし」
「あ、ああ・・・」
「整理する時間も必要でしょうから、彼女が帰って来てからでいいですよ」
「・・・いいのか? それで」
「はい」
ニコッと笑ってお茶をすする麻生は、いつもと違って落ち着いた雰囲気を出していて・・・大人っぽく見えた。
正直、胸がドキッとしたぜ。
俺は頭を下げて、麻生に礼を言った。
「分かった、その言葉に甘えさせてもらう。ありがとう、麻生」
「いえいえ。今日の先輩にはもっと大切な事がありますし」
「大切?」
頭を上げた俺の目に映ったのは、いきなり服を脱ぎだした麻生の姿だった。
「お、おい!? 何してんだよ!?」
「え、とりあえずご飯、作ろうかと」
「それで服を脱ぐのは何故!?」
「裸エプロン、嫌いですか?」
麻生は洗濯機の中に料理と一緒に入っていた荷物の中から、ピンク色が妙に目に刺さるエプロンを引っ張り出した。
何が入ってるのかと思ったら・・・。
「今日の為に新しく買ったんです。小さめのサイズだから、胸元もよく見えますよ~」
さっきの大人びた雰囲気はどこへやら、実に楽しそうにエプロンを見せながら俺に微笑む麻生であった。
一瞬、全裸でこれを身に着けた麻生を妄想してしまった・・・。イカン、我がジュニアが反応を。
落ち着け俺、色即是空、空即是色。
「き、気持ちは嬉しいんだけどな、普通に作ってくれればいいから」
「そうですかあ? 先輩がそれでいいなら・・・」
何故そんなに残念そうな顔をする、そんなにしたかったのか、裸エプロン。
嫌いじゃないぞ。むしろ嬉しい。やってくれると言うならぜひお願いしたい所だ。・・・普段ならな。
「ほら、今夜は色々あったからさ。できれば落ち着いて食いたいんだよ、ウン。それに食事前からそんな悩殺光景見せつけられたら、せっかくの料理なのに味も分からなくなりそうだし」
しょんぼりした麻生に、慌ててフォローを入れる。
「・・・そうですね。じゃあ、裸エプロンは次の機会にって事で」
やってみたいんだな、裸エプロン・・・。
服を着直してピンクのエプロンをつけた麻生は、そのまま台所へと向かった。
「それじゃ先輩、台所お借りしますね」
「ああ。・・・っと、それはそうと体の方は大丈夫なのか?」
麻生の背に声を掛けた。
「全然平気ですよ! あの外人さんの攻撃、かすりもしませんでしたから」
麻生は腕まくりした二の腕を、もう片方の手で抑えてニカッと笑った。
はは、大したもんだよ、まったく!
麻生の作ってくれた料理は、麻婆豆腐と五目あんかけ炒飯だった。
これがまた中々に美味い。
店に出せるレベル・・・と言ったら褒め過ぎかもしれないが、俺的にはそれ位の味だったのだ。
「しかし、麻生が忍者の子孫だったとはなぁ・・・」
炒飯を頬張りつつ、俺は思わず呟いて、後悔した。
麻生はさっき、『先祖の事は色々と知られたくない事もある』って言ってたよな・・・失敗した。
「あ、悪い! 麻生にも色々事情があるもんな」
「クス、少し位ならいいですよ」
額にうっすらと汗を掻きながら、麻婆豆腐をパクついている麻生が笑った。
「私の先祖は藤林長門守といって、織田信長の伊賀攻めの時に女子供を中心に一族の者を逃がしたんだそうです」
「ああ、伊賀攻めなら知ってるぜ。忍者の力を警戒した信長が攻めたとか何とか」
「ええ。その際に長門守は、『麻生』と名乗って一般人に混じって生き延びるように言ったそうです。『麻』の中の『林』は藤林の林の意味で、これから『生』まれてくる藤林の子孫を家の中に隠し、生き長らえるようにとの願いをこめて」
「へええ・・・」
『信長の伊賀攻め』・・・漫画とかでよく使われる話なだけに、話としちゃ知ってたけど、そんな裏話もあったとはなぁ。
長門守がこめた願いの強さが、何となく伝わってくる感じだぜ。
「長門守は伊賀の上忍でしたけど、甲賀忍者にも配下がいて、少数の甲賀忍者がその時一緒に脱出したそうです」
「甲賀忍者が?」
「ええ。無事に逃げる事が出来た藤林の者と、その甲賀忍者たちはその後も助け合って生き延びて・・・そんな中、長門守の直系と甲賀忍者の女性が結婚したそうです。それが私の直接の先祖なんですよ」
「ほえぇ・・・。そりゃ、ちょっとロマンチックだな」
「あ、先輩もそう思います? 私もこの話をお婆ちゃんに聞いた時はちょっとホロリとしちゃいました」
嬉しそうに言う麻生に、俺も微笑んで頷いた。
確か、伊賀攻めが終わった後も信長の忍者狩りは続いて、かなりの数の忍者が殺されたとか。
見つかれば命は無い・・・。そんな状況で助け合っていた人が惹かれあうのは不思議じゃないよな。
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