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ハーレム・ドラッグ第三章―5
「後藤君、大丈夫!?」「孝一様!」

 風那に続いて降り立ったのは、玲子先生と、あの白銀の少女だった。
 白銀の少女は、着ている和服がかなりボロボロになってる。
 体には傷が無いみたいだから、一戦交えて何とか無事に逃げたって所か。
 それにしても、こりゃ一体どういう状況だ?

「孝一様・・・! 申し訳ありません、私が不甲斐ないばかりにこのような・・・。遠藤様、孝一様の治療をお願いします」
「任せて。空那ちゃん、後藤君をこっちへ、篠宮さんも!」
「は、はいっ」

 百合香が俺たちの側へ駆け寄った。
 空那は俺を軽々と抱きかかえ、玲子先生へとそっと手渡す。
 全身の傷がきしみ、思わずうめき声が漏れた。

「頼んだよ、玲子先生。孝一兄ちゃん、見ててね。お姉ちゃんと一緒に、孝一兄ちゃんの痛みを百倍にしてお返ししてやるから!」

 空那は踵を返し、風那の方に走っていった。
 コラ待て、何をする気だお前ら! 危険だ!

「動かないで、後藤君。二人なら大丈夫よ」
「この三人には、文十郎様が錬金術でお作りになった道具をお渡ししています。連中相手でも、決して引けは取りません」

 錬金術の道具?
 ロイドを落としたり、俺を空中でキャッチしたのはそれの力か・・・。俺は少しばかり安堵した。

「孝ちゃん、孝ちゃん、しっかり・・・!」
「大丈夫よ、篠宮さん。絶対に死なせたりしないわ」
「先生、何がどうなって・・・」
「詳しい話は後。今は、彼を治さないとね」

 玲子先生はそう言って、俺の体を抱きしめる。
 すると、先生の体全体が淡いミントグリーンの光を放ちだした。
 その光が俺の体も包み込むように『移動』してくる。
 大きな布というか、マントにくるまれたような感じだ。

 なんだこれ・・・? 傷口から、光が俺の体の中に入ってくる!
 心地よく、不思議な感覚だった。
 体内に入った光は細胞に染み込み、活性化させ、傷を猛スピードで治していく。
 さっき、俺が百合香たちを治したのよりスピードは遅いけど、それでもあっという間に喋れるくらいには回復していった。
 凄いな、先生・・・。

「んっ・・・、先、生・・・」
「もうしばらく我慢してね。傷が酷すぎてまだかかるから」

 優しい笑顔を浮かべる先生に、俺も口元に笑みを浮かべた。

「私は守りに徹します・・・金剛夜叉明王!」

 白銀の少女が両手を振ると、紅夜叉と金色菩薩が規則正しく交互に並んで作られたネットが、本村さんたちを含めて俺たちをドーム型に包み込んだ。
 前回、ロイドがぶん投げたトイレの破片を防いだ奴か。
 これなら、そう簡単には破れられないだろう。

「・・・久しぶりね、玲子」
「えっ?」

 空中からスカーレットと一緒に降り立った氷室が言っ・・・何だと!?

「親友を忘れたの? 私よ、氷室恵美よ」
「め・・・恵美!? あなた、どうして・・・!」

 先生が驚愕に目を開く。
 ミントグリーンの光が一瞬揺らめき、それを慌てて戻す先生の体が、震えていた。

「玲子先生、この人、知り合いなの?」
「・・・学生時代の友人よ。中国に一人旅に行って、行方不明になっていたのに・・・」

 空那の問いに、先生が震える唇で答えた。
 そのまま氷室に声を張り上げた。

「あなた、今まで何処で何をしていたの!? みんな心配していたのよ! あなたのご両親と弟の弘樹君だって、どんなに・・・!」
「そんなに怒らないでよ、色々あったのよ。ああ、家には顔を出しておいたから、もう気にする必要はないわ」

(・・・?)

 俺は氷室の言葉の中に、奇妙なものを感じた。
 『気にする必要はない』・・・?
 訳も分らずに、背筋に冷たいものが走った。

「・・・ちょっと待て、氷室さんよ」
「なあに? 浩一クン」
「・・・あんた、自分の家族に何やった?」

 一瞬、空気が固まった。
 先生の腕に、力がこもって俺の体を抱きしめる。
 氷室の顔に、人外の気配が滲み出たからだ。

「・・・勘がいいわねぇ」
「まさか・・・」
「ふふ、『美味しかった』わ」

 舌で唇を濡らすように舐めるその姿に、俺は恐怖を感じた。

「母さんにスカーレットを見せたら、私たちのことを『バケモノ!』って言ったのよ~、ひどいと思わない? だから食べちゃった♪ 父さんと弘樹は、せっかくだから私を抱かせてあげて、そのままゆっくりと食べてあげたの。二人とも泣きながら喜んでたわ。弘樹ったらね、私とセックスするのが夢だったんですって。ふふ、可愛かったわぁ」

 陶酔し、濡れた瞳で語る氷室の姿に、怖気が走る。
 この女、自分の家族まで手にかけたのか!

「・・・あなたは誰」
「え? だから氷室めぐ・・・」
「違うっ!!」

 先生が俺を抱きしめたまま、声を荒げた。
 その強い口調に、俺は驚いて目を向ける。

「私の親友は・・・絶対にそんな事はしない! 家族思いで、友達思いで、いつだって自分よりも他人のことを気にかける優しい人よ! あなたは恵美じゃない!!」

 俺の顔に、何かが落ちてきた。
 ・・・先生の涙だった。
 口ではああ言ってたけど、内心では分っていたんだろう。
 あの女は、間違いなく氷室恵美・・・『だった』んだと。

「・・・まぁいいわ、その辺の話はまた今度にしましょ。でも、孝一クンは貰っていくわよ」

 スカーレットが体を震わせながら、こっちに向かってきた!
 その前に風那が立ちはだかる!

「させると思ってんのか、クラゲの出来損ないが! ・・・っ!?」
「グォォ・・・ッ!」

 叫び声がした方を見れば、ロイドがアスファルトにめり込んだ体を起こしている所だった。
 風那の蹴りを受けた胸の装甲が破れ、内部の機械が露出して白い火花が散っている。あれぐらいじゃ、まだ行動不能にできないのか。

 ロイドが落ちたのは、燃える本村さんの車の近くだった。
 車を無造作に片手で掴み、そのまま持ち上げ・・・て・・・。
 風那に向かって投げやがった!!

「シッ!!」

 ぶつかる直前、風那は左のショートアッパーで車を迎撃し、宙に浮かばせる!

「うぉらあっ!!」

 続いて渾身の右ストレートを放ち、車をロイドに向かって逆に殴り返す!
 ロイドは飛来する車に上段から手刀を振り下ろし、車をぶった切った!
 二つに分かれた車は、ロイドの両脇を通り過ぎて遥か後方へと吹っ飛んでいった。
 ロイドも凄いが、風那も凄い。単に力が強いだけじゃ出来ない芸当だ。

「いいだろ、クズ鉄! テメエの相手はあたしだ!」

 そう叫ぶと、風那はロイドに向かって走り出した。
 ロイドも巨体に見合わぬ早さで、風那に向かって走り出す。

「うぉおらぁぁぁーーーーっ!!」
「グォォォッ!!」

 両者そのままの勢いで互いの右拳を激突させた!!
 風那とロイドの拳がぶつかり合った瞬間、重たい金属同士がぶつかったような音が響き、双方の足が地面にめり込んで陥没させる。
 時間が止まったように二人の体が止まり、そのままの姿勢で硬直した。

 互角か!?
 俺がそう思った時、何かが砕ける音が二人の間から聞こえてきた。
 どちらかが打ち負けたのか!?

「・・・マジかよ」

 風那の呟きが、風に乗って俺の耳に届いた。

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
ふーむ…
玲子の能力あるいは装備品?は治癒特化かな?
治癒を促進させすぎることによる細胞破壊能力もありそうだけど。氷室が完全に取り込まれているかが氷室の今後を左右しそうですね…改変薬という裏技もありはしますが。
……しかしフラグ期待したひとには結構かなしい話かも(私もちょい痛かった)
それでは~
2009/02/24(Tue) 02:27 | URL | ソウシ | 【編集
コメントありがとうございます
>>ソウシ さん
玲子先生の能力は氷室とちょっと関連があったりして。
概念的にですけどね。
フラグは・・・さて、有るのか無いのか(ぉ
氷室はこの小説の女性キャラで、ある面をしょってるキャラですので、まだ分かりませんですよ。
孝一の頑張りに大きく左右されるんで、張り切ってもらいましょうw
2009/02/24(Tue) 12:59 | URL | HEKS | 【編集
Re: ハーレム・ドラッグ第三章―5
白銀の少女の傷って完治したのかな?
治ってたらすごい回復能力ですねw
孝一の能力は強力だからデメリットが大きいのは
わかるのですが、他の人たちも能力を使うデメリットってあるんですか?
2009/02/28(Sat) 17:54 | URL | ヒデ | 【編集
コメントありがとうございます
>>ヒデ さん
先ほどアップした三章―6にちょっと描写しましたが、完治、ではないですね。

能力のメリット・デメリットですが、ある人、ない人混在してます。
まだ能力を細かく煮詰めていない人もいますので・・・。

今の所デメリットがはっきりしてるのは風那ですね。
まぁ、言わずともお分かりでしょうw
どっちかってーと、副作用って感じですけどw
2009/03/02(Mon) 04:27 | URL | HEKS | 【編集
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