2ntブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ハーレム・ドラッグ第三章―1
『アーリン、こっちじゃ!!』
『ま・・・待って、私、もう・・・!』

 ・・・ん、何だこりゃ。
 目の前に、よく分からん光景が広がっている。
 え~~~~と・・・夢かな?
 暗い砂利道を、一組の男女が走っている。
 男の方は、随分古めかしい格好をしてるな。着物を着て・・・でもチョンマゲじゃないから江戸時代じゃないな。明治辺り?
 あ、女の方が限界なのか、道にしゃがみ込んじまった。

『もういいわ。ここで私を置いていって・・・』
『何を馬鹿な事を言うとる! もう少しで船着場じゃ、頑張れ!』
『でも、これ以上、あなたに迷惑をかける訳には・・・』
『惚れた女にかけられる迷惑なんぞ、迷惑に入らぬよ。それを何とかするのが男の甲斐性じゃ。ほれ、立つんじゃ!』
『・・・ハイ・・・!』

 女の方は・・・おりょ、金髪だ。着物着てるけど、外人さんだよ。
 男の方が、女の手を掴んでまた走り始める。
 しばらく走り続けると、港が見えてきた。
 大きな船が停泊している。二人を待っているように見えた。

『よし、間に合ったぞ!』
『ああ・・・』

 二人は船に架けられた板を上って、船に乗り込んでいった。
 甲板で安堵の息を吐いている。女の方はへたり込んじまった。よほど疲れてたんだな。
 二人が乗り込み終わると、架けられていた板が外され、船が港を離れ始めた。
 見詰めあって微笑を浮かべた二人が港に目を向けると、その表情が強張った。
 その視線の先には・・・何だ!?

 何かが、もの凄い速さで港の奥から船に向かってやって来る!
 人間? いやいや、人間があんな速さで移動できる訳がねぇ。
 でも、その姿が近づくにつれてはっきりと分かると、俺は開いた口がふさがらなかった。
 黒い外套を纏った大きな男だ。

 そいつは立っていた・・・子牛ほどもありそうな大きさの、黒い犬の背に。
 犬はジグザグに飛び跳ねながら、船に向かって近づいて来ていた。外套の男は、揺れも慣性も完全に無視して乗っていやがる。
 まだ船は港からさほど離れていない。あの犬の速度なら、ジャンプして余裕で乗り込めそうな感じだ。

『・・・アーリン、達者でな』
『えっ・・・?』

 船の上の男が、女から離れて言った。

『わしはここで奴を食い止める』
『そんな! 嫌です! 一緒に・・・!』
『駄目じゃ。奴に対抗できる力を持つのは、わしだけじゃ。ここで多少なりとも時間を稼げば、お前が逃げ切れる可能性も上がるじゃろう』
『嫌です! 嫌! ならば私もここで共に・・・』
『その体では無理じゃ、そうじゃろ?』
「・・・っ・・・』

 女がお腹に手を触れてさすっている。
 ちょっと膨らんでる? そうか、妊娠してるんだ・・・。

『さらばじゃ、アーリン。その子の事、頼むぞ』
『待っ・・・!!』

 男が船から飛び降りた!
 ・・・って・・・と、飛んだ!?
 空中を滑空するように飛んだ男が、黒い外套の男に向かって突っ込んでいく!

『この腐れ外道が!! わしの女房には指一本触れさせん!!』

 男の両手が青白く光った・・・え!?
 複雑な模様が手の表面を這い回るように蠢き、光って・・・あ、あれは・・・干渉と改変の・・・!!

『・・・『改変薬』を飲んだ者よ』

 えっ!?
 外套の男に飛びかかっていく男が、不意に振り向いて俺を見た。
 見ている光景がスローになり、また男の声が響く。

『『運命改変薬』の力は限定的な物。善行を行った時に限り、『礼』という形で発揮されるが、これは本来の力の万分の一も発揮されてはおらん』

 驚く俺を無視して、声は続いていく。

『改変薬は、理不尽な運命、理不尽な不幸・・・。そういったものにささやかな抵抗をする為の物だった。だが・・・それは想像以上の力を持ってしまった』

 男が俺に両手を見せた。青白い模様が目まぐるしく蠢き、皮膚を這いずり回っている。
 いつの間にか港や黒い外套の男も消え失せて、周りの光景は白一色に染まっていた。
 男は、まるで星の無い白い宇宙空間の中に、ポツンと浮かんでいる様だった。

『その力を強制的に発動させ、因果律を自在に操る事で望む事象を発生させるのが、改変薬の真の力・・・この『干渉と改変の蛇』だ』

 スゥッ・・・と男が俺に近づいてきた。
 眼前に、男の姿がアップで迫る。

『この力を望むなら振るうがいい、ただし・・・』

(ただし・・・何?)

『この力は諸刃の刃、限界を超えた力を振るおうとすれば、自分の命を削る』

(命を・・・削る・・・)

『改変薬の力で肉体の強化が成されるのは、それに少しでも耐性を持つ為じゃ。もっとも、普通に体を鍛えれば手に入る程度の強さじゃがな』

(あ、なるほど。強くなったといっても、超人レベルにいかないのはそのせいか。どうせなら頭の方も良くなれば嬉しかったのに)

『それは出来ん。何故なら、本来、改変薬は飲んだ本人に力を発揮する事は出来んのだ。体の強化は因果律に影響を及ぼさない、ギリギリの範囲でのもの・・・』

(普通に鍛えれば手に入る程度の強さ・・・だからギリギリ大丈夫ってことか。軽いドーピングみたいなもんか)

『そうじゃ。本人の因果律を書き換えれば、改変薬の力が誤作動を起こしかねん。何が起こるか分からぬ。自分の存在があらゆる時空から消滅してしまうかも知れぬ』

(・・・俺が完全消滅するって事?)

『うむ、元から『生まれなかった』事になるだろう・・・それも推測に過ぎんがな。もっと酷い事になる可能性もある。この世界の消滅、なども考えられる』

(・・・げ。ちょっとそれ、ヤバイとか言うレベルじゃ・・・)

『それだけ強大な力を持ってしまったのじゃ、『運命改変薬』は・・・。逆に言えば、本人以外、いかなる事も思いのままに出来るという事・・・。神仏にも等しい、いや、それをもねじ伏せてしまえるやもしれん力じゃ』

(・・・・・・・・・・・・)

 夢の中なのに、俺の生唾を飲み込む音が聞こえたような気がした。

『大切な者を、守ることも出来るじゃろう』

(大切な者・・・)

 あれ、何か引っかかったぞ。
 何か忘れているような・・・。

『望むなら力を振るえ。私利私欲ではなく、他者の為に。それこそが『万物の流転』を模して作られた『運命改変薬』の存在理由じゃ』

 世界が暗くなっていく。
 男の姿も暗闇の中にゆっくりと消えていく。
 同時に、体の感覚が戻り始めてきた。
 う? 何かすげぇ苦しい、特に胸が・・・っつーか痛え!!

「ぐっ・・・うが・・・っ!」

 開けた俺の目に飛び込んできたのは、アスファルトの地面に倒れた百合香と、本村さん一家だった。
 俺の体も地面に投げ出されている。
 そして、視界の端にうつる白い二本の足と、不定形の赤い塊・・・。

 ここで、ようやく俺の頭がはっきりした。

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
Re: ハーレム・ドラッグ第三章―1
執筆御苦労さまです。


なんとなく、逃げてた男女の正体の予測はつきますが、敢えて言わないでおきます。
同じ予測を立てた人もいるでしょうし、外した時恥ずかしいので(笑)
とりあえず、答えが出た時に「予想通り」と言っておけば外れませんし(笑)


やはり、キーは改変薬ですか。
とりあえず百合香が復活するのを期待しつつ、次回を待たせていただきます。
2009/01/19(Mon) 18:17 | URL | sk | 【編集
更新お疲れ様です。
やはり状況打破するのは改変薬か。
しかしスケールがでかくなってきたなぁ…
始まりの頃の軽いノリが懐かしい(笑)
少し軽めの展開が欲しいと思うこの頃でした。
それでは~
2009/01/20(Tue) 23:18 | URL | ソウシ | 【編集
コメントありがとうございます
>>sk さん
あなたの後ろに、リンゴ好きの死神がいたりしませんか?w

冒頭の二人は・・・まぁ、想像通りでしょうw
が、この二人については他にもちょっとモニャモニャ・・・があったりして。
はっきり分かるのは、当分先になるでしょう。

百合香は・・・さて、どうなるのかなぁ(ぉ


>>ソウシ さん
確かに、初めの頃とは大分違ってきましたね。
その内、軽めのパートも書くつもりでいますんで。
基本的に、軽いノリは私も好物ですんでw
2009/01/21(Wed) 01:20 | URL | HEKS | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック