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ハーレム・ドラッグ第四章―3

「大きな声を出さないで答えて貰いましょうか・・・、貴方たちは誰?」
「この部屋に何の用ですか?」

 背後の二人が小さな声で問う。その声の中に刃を感じた。
 少しでもおかしなそぶりを見せたら、有無を言わさず切り伏せる・・・そんな力を込めた声。
 普通、こんな声を掛けられたら萎縮して言いなりになりそうな所だが・・・。俺はこの声に聞き覚えがあった。

「えっと・・・もしかして、さつきと夕紀か?」
「えっ・・・?!」
「俺だよ、孝一だ。そっちは百合香だよ」
「孝一さんと篠宮先輩・・・?」

 背後の二人が明らかに動揺を見せた。刺激しないようにゆっくりと振り向く。
 背後にいたのは、予想通り、さつきと夕紀だった。
 やれやれ、アイシャ達じゃなくて良かったぜ。ほっと安心してメットを取る。
 首筋に何か冷たくて固いモノが当たった。
 ・・・って、真剣じゃあーりませんか!?

「孝一じゃないじゃない!」
「待て! 本当だ! これは変装してるんだよ! 刺さる! 刺さるから詰め寄るな!」
「さつき、落ち着いてよ。麻生さんも」

 百合香がそう言いつつ、メットを取る。
 頭を軽く振り、柔らかな黒髪をその背中に流すと柔らかく微笑んだ。

「百合香・・・! じゃあ、本当に・・・孝一なの?」
「孝一さん、一体何処行ってたんですかっ・・・! 心配、したんですよ・・・! ッ・・・ふぇ・・・!」

 二人の目から、見る見る涙が溢れてこぼれ落ちる。
 同時に、俺の身体にしがみついて啜り泣いちまった。
 もしかして・・・、この二人には何も連絡が行ってなかったのか?
 困った視線を百合香に向けると、察してくれたのか苦笑しつつ口を開いた。

「えーっと、二人には連絡してなかったのよ・・・。事情が事情だし、巻き込むのもどうかと思ったから・・・。みんなと相談して、その辺の判断はあなたに任せようって事で落ち着いたの。ごめんなさい、言うのを忘れていたわ」

 ・・・なるほど。
 まぁ、確かに俺が寝込んでいちゃ判断つきかねるわな。

「一応、さつきには『二人で暫く留守にするけど心配しないで』ってメールしたんだけど・・・」
「余計に心配になるわよ! 双子ちゃんや玲子先生とも連絡がつかないし、夕紀から公園の事を聞いたから、何かあったんじゃないかって・・・。」
「そうですよ! またあの外人さんに襲われたんじゃないかって、心配で心配で・・・」
「そっか・・・ごめんな二人とも。その、色々とあってな・・・」
「孝ちゃん、ここだと目立つわ、取り敢えず部屋に入らない?」

 百合香が周りを警戒しつつ言った。
 確かにその通りだな。アイシャの仲間達がいつこのアパートを突き止めるか分からんし。
 ん、何か二人の啜り泣きが止まったぞ?

「百合香が・・・『孝ちゃん』?」
「随分と・・・砕けた呼び方ですね・・・? 孝一さん・・・?」

 ・・・えっと。

「あの、二人とも? どうして声が怖い感じになってらっしゃるのでしょうか?」

 か、身体が動かねぇ?!
 しがみついてる二人の力で金縛りに!?

「気のせいですよぉ、ねぇ、さつきさん?」
「その通りよ、さ、部屋に入って話を聞かせて貰いましょうか」
「「洗いざらい全部、ね・・・!」」

 ヒィィッ! 怖い! 二人ともその爽やかな笑顔がとっても怖いです!

「孝一、鍵」
「ハ、ハイッ、どうぞ・・・」

 震える手でポケットから取りだした部屋の鍵を、さつきが素早く取ってドアを開けた。
 俺は両脇をさつきと夕紀に固められて、CIAに連行される宇宙人のようにズルズルと部屋の中に連れ込まれていく。
 自分の部屋が何故か魔界の入り口に感じられるのは、気のせいではあるまい。

 チラリと百合香を見ると・・・。
 面白そうに笑ってくれてますかそうですか。
 はぁ・・・覚悟を決めて全部白状するか。出来るなら巻き込みたくは無いんだが・・・。

 とはいえ、さつきと夕紀は、戦闘には素人の俺から見ても即戦力になる強力な人材だ。
 恐らく俺の心配は、一刀両断に切り捨てられるだろうな。


「なるほどね。それじゃ、私も戦うわ」
「私もです!」

 改変薬から始まった全ての事を説明した後、予想通り二人は間髪入れず参戦を表明した。
 百合香たちと同じように、自分たちが俺に惚れたのは自分の意志なんだときっぱり言い切ってくれた。
 ああ、もう、胸が熱くなるじゃないか・・・。あんまり萌えさせないでくれ。

「麻生さんまで連中との戦闘経験者だったとはね。正直、心強いわ。相手は得体の知れない連中だから・・・」
「話に聞く限りじゃ、相当手強そうね。孝一、私たちにも何か道具を貸して貰えるかしら?」
「んじゃ、一緒に地下錬金研究室に行くか。そんで彼女に聞いてみよう」
「和服さんですね?」
「ああ。・・・っと、彼女と恵美さんの名前を考えなきゃいけなかったんだっけ」

 うーん・・・恵美さんは・・・。
 出来れば、元の名前に少しは関係してる名前にしてあげたいよな。
 めぐみ・・・うつくしい、めぐみ・・・。
 めぐみを与える・・・貰う・・・貰うと嬉しい・・・幸せになる?

「恵美さんは・・・、美しい幸せで『美幸』ってどうだろう?」
「美幸さん・・・か。一文字残してて、うん、良いんじゃない? 孝ちゃんにしては上出来かな」
「異論無しです」
「同じく」
「俺にしては、だけ余計じゃい」

 おし、恵美さんの新しい名前は美幸さんにひとまず決定だ。
 気に入って貰えると良いんだがな。

「次は彼女か・・・」

 恵美さんの場合は元の名前が切っ掛けになったけど、ホムンクルスのあの子にはそれが無いんだよなあ。
 ウンウンと頭を捻っていると、ふと部屋の片隅に置いてある小さな仏壇が目に入る。
 それには親父とお袋、それに生まれる前に死んじまった妹の位牌が収まっている。
 ・・・あ。

「雪音(ゆきね)・・・」
「えっ?」

 俺の呟きに、百合香が少し驚いた声を上げる。
 そういや、百合香は知ってたよな、この名前。

「雪の音って書いて、雪音。どうかな?」
「へぇ、風情があって良いわね。私は賛成よ」
「和服さんにピッタリじゃないですか、良いと思います!」
「よし、彼女の名前は雪音だ」
「・・・・・・」

 何か言いたそうにしている百合香に、そっと笑顔を見せる。
 小さく息をついて、百合香は俺をじっと見る。
 どこか、痛々しい見るような顔。
 大丈夫さ、きっとあいつも許してくれる。彼女は命の恩人なんだし。
 俺は仏壇を見て、心の中で呟いた。

(良いだろ? 雪音)

 妹が・・・、雪音が笑って頷いたような気がしたのは、俺の都合の良い妄想とは思いたくない、な。

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
おや、再開されたんですか?
また楽しみにしてますよ
2011/02/27(Sun) 22:11 | URL |  | 【編集
コメントありがとうございます
>>名無しさん
何とか更新の目処が立ってきたので、少しづつ書いていこうと思っています。
しかし、まさか再開したその日にコメントいただけるとは思いませんでした。
嬉しい限りです。

2011/02/28(Mon) 13:43 | URL | HEKS | 【編集
再開感激です
再開おめでとうございます。これからも、がんばってください。
2011/02/28(Mon) 21:31 | URL | mm三太 | 【編集
コメントありがとうございます
>>mm三太 さん
応援、ありがとうございます。
以前のように週一ペースでの更新は無理ですが、少しずつでも書いて更新しようと思っています。

2011/03/01(Tue) 10:56 | URL | HEKS | 【編集
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