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ハーレム・ドラッグ―13
「先輩ぃーーーーっ!!」
「ぐべぼっぶぅはあぁっっっ!?」

 俺の首根っこに、盛大に特攻ダイビング(ラリアート気味)を敢行してくれやがったのは、顔見知りの後輩だった。

「聞きましたよ桐山先輩と篠宮先輩の事!! 二人が先輩の家に食事を作りに行って、そのままお泊りして、先輩の女にして貰う為にあんな事やこんな事をしてもらおうとしてるって、本当ですかぁぁ!?」

 そのまま俺の首を掴んで体をガックンガックン揺さぶりながら、危ない事を喚いている。
 それよりも苦しいのだがな、絞まってるっつーの。

「やあ夕紀ちゃん。今日は遅かったね」

 金城がのんびりと挨拶した。

「ども、先輩方! この噂本当ですか!?」
「随分とあっさりとした挨拶だこと。うん、まぁ、半分くらいは当たってるかな」
「あ、当たって・・・当たってるんですかぁぁ!?」

 高原のこれまたのんびりした返事に、彼女が更に俺の体を前後に揺らす。
 っつーかな、食いかけの焼きそばパンが落ちるではないか。助けろお前ら。
 お、やっと動きが止まった。
 ・・・彼女は俯いたまま、肩をぷるぷる震わせている。

「ふ、ふふ、ふふふふふふ・・・! そお~ですか、本当だったんですか、この噂は・・・!」
「ちょ、待て、『半分くらい』と言っていただろうが! 百パーセントの真実に脳内変換するな!」

 表情が見えないのが怖い。
 あ、今度は震えが止まった。

「あの二人が本気になったのなら・・・私も悠長に構えてられませんね。先輩、覚悟しておいてくださいね! 私、負けませんから!!」

 がばっと顔を上げた麻生の顔は真剣そのものだった。瞳の中に、燃え盛る炎のイリュージョンが見えてしまいそうなくらいに。
 と言うかな、人の話を聞け。
 大体、何で俺が覚悟せにゃならんのだ?

「では先輩方! 今日はこれで失礼します!!」

 彼女は返事も聞かずに階段に突進して、見えなくなってしまった・・・。
 最後まで俺と会話をしなかったな。

「相変わらずだな、あのキャノンボール娘は」
「まったくだ」

 桑田の呆れた声に、溜め息と同時に返事をした。
 彼女の名前は麻生夕紀(あそう ゆき)。俺たちの一つ下の後輩だ。
 二ヶ月ほど前から、ああやって疾風のように現れては俺にアタックして疾風のように去っていく。
 普段は教室に押しかけてくるが、今日は避難先のここに来たか。

 不思議なのは、彼女が俺のどこを気に入ったのがまるで分からん事だ。何しろ、それまで会った事も話した事も無いんだから。
 聞いても上手くはぐらかされちまうし・・・。
 やっぱり、運命改変薬の力のせいか? しかし、善行をした相手という訳でもないのに・・・。

 古文書にはまだ未解読部分が残ってる、調べてみるか。
 この古文書、結構分厚いんだよなぁ・・・完全解読までにはまだ時間がかかりそうだ。

「なあ後藤、あの子もメシを作りに押しかけてくるんじゃないか?」
「ぐっ・・・」

 金城のさらっと言った言葉に、さっきとは違った悪寒が背筋に・・・。

「ありえるな」
「ありえますな」
「と言うか、ぜひそうなって欲しい。面白いから」

 口々に好きな事をほざく連中に文句を言う気も起きず、俺は思わず天を仰いだ。
 見知らぬご先祖様が親指を立て、歯をキラリと光らせながらニヤついている幻を見たような気がしたぜ。


 午後の時間も桐山と篠宮の好意と照れ隠し、それに対応した冷やかしと嫉妬に翻弄されながら何とか終える事が出来た。
 嫉妬に狂った連中が何をしでかすのか分かったもんじゃないので、急いで帰り支度をしている俺に桐山と篠宮が声をかけてきた。

「じゃあ後藤、先に帰っててよ。私は材料を買ってから行くからさ」
「・・・本気で来る気なのかよ?」
「当然でしょ」

 何ゆえに当然なのか、よく分からないのですが。

「まあ、楽しみにしててよ。私の手料理で骨抜きにしてやるからさ!」
「わ、私はそんなつもりは無いけど! 見張りと、あなたの食生活があまりに惨めで可哀想だから、お情けで食事を作りに行ってあげるわ。感謝しなさいよね」

 篠宮は篠宮でツンデレのツンツンモード全開だし。
 ここまで来たら、毒を食らわば皿までってやつかね。覚悟を決めて何とか乗り切るか。

「わーかったよ。取りあえず、今日のところはありがたく作ってもらうよ。正直、まともなメシが恋しいのも事実だしな」
「まかせときなさい。ほら百合香、買い物一緒に行くんでしょ!」
「う、うん。ご、後藤! ちゃんと寄り道しないで、家で待ってなさいよ!」

 俺を指差して喚く篠宮を引っ張りながら、桐山は教室を出て行った。

「・・・さてと」

 二人が教室から出た途端、俺を捕らえようとする嫉妬組みがじりじりと包囲してくる。教室の外には噂を聞いて来たのだろう、他のクラスの嫉妬組みまで来ているようだ。

 桑田たち悪友どもはさっさと安全圏に避難して、楽しそうに見学に興じてやがる。美しき友情に乾杯。

「話せば分かる・・・ようなら苦労しねーよな。頑張って脱出しましょうかね」

 久しぶりに、美味そうな飯にありつけそうだしな。
 それも二人で作ってくれるってんだからな~。何のかんの言いながら、俺も期待しちまってるんだ。

 しかし、俺はこの考えがひじょーーーに甘かったと、後で後悔する事になるのだった。

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
ホントに出して頂けるなんて感激です!!いつも更新楽しみにしているのでこれからも頑張ってください♪
2008/01/21(Mon) 21:46 | URL | 匿名 | 【編集
コメントありがとうございます
>>匿名 さん
どうも、結局出してしまいましたw
正直、『ご都合』の方のキャラをこちらに出す事はまるで考えていませんでした。
しかし、主役で一本書きたいくらいに気に入ってるキャラであったのと、それがストップしている状態だったのが勿体無かったのも事実。
前回のあなたのコメントから色々考えて、こちらのヒロインの一人として登場させる事にしました。
書くのが久しぶりなせいか、性格が『浩二君の』時より更にはっちゃけてる気がしますw
不思議な縁で復活&出張出演を果たした夕紀ともども、これからもお付合いください。
2008/01/21(Mon) 23:31 | URL | HEKS | 【編集
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