2ntブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ハーレム・ドラッグ第三章―7
 近づいてきた氷室が、俺たちを守っている夜叉明王に両手を触れる。
 途端に接触面から赤い小さな火花と稲妻がほとばしった。

「中々強力ね、でも・・・!」

 氷室が力を込めると、じわじわと接触面が灰色になっていく! 夜叉明王の力が弱まっているのか!?

「私の毒、『ヴィーナス・ヴェノム(女神の悪意)』は物質はおろか、結界をも侵す。ほぅら、そろそろ限界かしら?」
「ぐっ・・・!」

 白銀の少女が苦しそうな声を上げた。
 ヒヒイロカネで出来ている花びらまで、灰色になってやがる・・・!
 夜叉明王のドームが半分以上灰色に染まったところで、金と、赤と、灰色の花びらが飛び散るように、とうとう崩壊してしまった!
 氷室はすかさず白銀の少女の首を掴むと、宙に釣り上げる。

「ぐ、あっ・・・!」
「完治してなかったのね。でもあなたはしぶといから、ちょっと多めに毒を入れときましょ♪」

 ビクン、と少女の体が震え、力が抜けて動かなくなった。
 その体をゴミでも捨てるように脇に投げると、笑いながら俺たちに近づいてくる。

 なんて奴だ・・・。
 ロイドとスカーレットを物ともしなかった風那と空那、それにこの白銀の少女まで、こうもあっさりと・・・!

「さあ、玲子、孝一クンを渡してちょうだい。できればあなたを傷つけたくないのよ」
「・・・嫌よ。彼は私にとって大切な人、絶対に渡さないわ」
「へぇ・・・。あなたとは色々と気が合ったけど、男の好みまで同じとは思わなかったわ。・・・残念よ、悪く思わないでね」

 俺の体に触れている百合香の体が震えていた。
 けど、玲子先生の体は震えてはいなかった。
 氷室が俺に手を伸ばす。
 その手が先生の体から放たれているミントグリーンの光に触れた瞬間、煙を上げた!

「熱っ!? これは・・・!?」
「私の力は『治癒』の力。あなたの『毒』とは正反対。恵美、どちらの力が上か勝負よ・・・!」

 先生が声を上げた瞬間、光が爆発的に強くなった!
 ミントグリーンの光が氷室に襲いかかり、その全身から煙を吹き上げる!

「きゃあぁぁっ! ・・・っく! れ、玲子っ!!」

 氷室が再び両手をかざし、ミントグリーンの光と、手のひらから放たれる赤い光が互いを浸食しあう。
 だが、見ている内に赤い光はその輝きを弱めていく。
 先生の力の方が押している!

「ぐ、くぅ・・・っ!! ・・・あ、・・・ぁあ?」

 弱々しくなっていく赤い光を飲み込むように、ミントグリーンの光が氷室の体を包み込んでいく。
 体から煙を上げ、信じられないものを見るような目で氷室が俺を、いや、先生を見つめている。

「こ、こんな・・・! わ、私が、私の力が、どんどん、消えて・・・! あ、あぐあぁぁ!」

 氷室が苦悶の表情を浮かべ、苦しそうに身をよじる。
 治癒の力で苦しむってのも変な話だが、氷室の体はもう、毒の固まりみたいになっちまってるんだろう。
 しかし、玲子先生も余裕がなさそうだ、その顔には汗が噴き出ている。
 だが、これならいける!
 血の気が引いて青ざめていく氷室の体を見て、そう確信した時だった。

「ぐぅああぁ・・・っ。・・・あ・・・え? 玲、子・・・?」
「えっ・・・?」

 氷室の様子がおかしい。
 苦しんでいるのは変わらないが、その顔は明らかに戸惑っていた。

「こ、ここは・・・? あぐ、ぅ・・・! 私は・・・、何で・・・?」
「恵美・・・?」
「あ・・・、あああ・・・!? いや・・・、父さん、母さん、弘樹・・・! 玲子・・・玲子・・・! 助けて・・・!!」

 どうなってる・・・!?
 まるで、今までの氷室は偽者で、今が本物みたいじゃないか・・・!
 そう思ったのも束の間だった。

「ぐ・・・ぐぅぅあぁぁっ!! は、はああ・・・! くふ、ふふふ・・・っ。まだ食い残した部分が残っていたのね・・・。しぶとい事」

 氷室の目に、また人外の狂気が宿る。
 これは・・・まさか!!

「今のは・・・一体・・・?」
「先生、何となく分ったよ。さっきのが本当の氷室さんだ」
「え?」

 俺は氷室を・・・いや、氷室に『成り切って』いる奴を睨み付けて言った。

「今のお前は氷室恵美さん本人じゃない。彼女の体を乗っ取り、記憶を奪い、その記憶を元に恵美さんのように振る舞っているだけだ!」
「・・・・・・」

 氷室に成り切っている奴は答えない。
 俺はそれを肯定と受け取り、言葉を続けた。

「今、彼女の体を動かしているのは、スカーレット・イーター自身の意志だ!」
「・・・ふふ、ふふふっ・・・。その通りよ、孝一クン。今の私は、氷室恵美本人ではないわ」

 氷室が両肩を振るわせ、歯を剥き出しにして、おぞましい笑みを浮かべながら俺を見る。
 正体を見抜かれたことで、隠していた化け物の顔をさらけ出しやがったな。

「テメエ・・・! 出て行けよ! 体を彼女に返せ!」
「それは出来ないわ。私が出て行ったら、この体は数分と持たずに死ぬわよ。私がこの体の生命維持をしているんだから」

 氷室が言っていた言葉を思い出す。

『スカーレット・イーター(緋色の捕食者)って言うの。私の体の中で、血と内臓の代わりをしているのよ、綺麗でしょう?』

 血と内臓の代わりをしているって事は、多分、氷室とスカーレットは『共生』的な関係何だろう。
 お互いに助け合いながら、一つの生命のように生きている。・・・あくまで見た目はな。

 実際には、スカーレットが完全に支配していたわけだ。
 だが、そうと分かれば・・・!
 俺は左手を氷室に向けて伸ばした。

「・・・何をする気? またさっきの、ウロボロスの力を使うつもりなの? だいぶ回復したみたいだけど、下手をすれば今度こそ死ぬわよ!」
「後藤君、待って! 無茶は・・・」
「玲子先生、あの人は先生の親友なんでしょ?」

 先生の言葉を遮り、俺は氷室を見たまま聞いた。

「ええ・・・でも、彼女はもう・・・」
「彼女は『助けて』って言ったんだ。だったら・・・、やるだけやってみるだけだ!」

 俺の中で、蛇が鎌首をもたげる。
 痛覚を遮断し、意識を蛇のみに向ける。
 力の奔流が全身を駆け巡り、左腕に集まっていく。

「氷室恵美を助ける・・・! その善行を餌として・・・! 『干渉と改変の蛇』、強制『逆行』発動!!」

 左手に白と黒の光の模様が溢れ、のたうち回る。
 模様の動きが加速し、目で追えないほどの速さになった時、それは左手から飛び出して氷室の体に絡みつき、包み込んでいく。
 蛇が獲物の体に巻き付き、締め付けるように。

「スカーレット! テメェはここで終わらせてやる・・・覚悟しやがれ!!」

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
更新お疲れ様です。
やはり玲子さんが天敵でしたか。
しかしまさかの改変発動…
氷室の結末はいかに!?
まあここで倒しても四天王だからあと三人いるから敵さんとの戦闘バランス考えてもまだ不利だから問題ないよね?
てことで主人公ガンバ!
それでは~
2009/03/09(Mon) 01:40 | URL | ソウシ | 【編集
Re: ハーレム・ドラッグ第三章―7
お久しぶりです^^

いつの間にか二話も進んでて狂喜乱舞のskでございますw


なるほど、スカーレットが氷室になり変っていたとわ・・・
ちょっち想定外でしたw

しかしこれで氷室助かったらホントにフラグ成立しちゃうんじゃ(しつこくてすみませんw)・・・w

それはそれで嬉しいですが^^


これからもがんばってください^^
2009/03/09(Mon) 17:06 | URL | sk | 【編集
Re: ハーレム・ドラッグ第三章―7
まさか恵美が仲間にになり
ハーレム拡大か?
とかワクテカしながら読んでますw
2009/03/10(Tue) 09:13 | URL | ヒデ | 【編集
コメントありがとうございます
>>ソウシ さん
今のところ、全体的に敵戦力の方がまだ上ですね。
まだ詳しい事情を知らない娘が二人ほどおりますのでw

その二人が、私の後ろで最近出番が無いことに文句を言っておりますが、華麗にスルーしたいと思いますw
もうちょっと待ってろ、真剣とか十方手裏剣とか構えるんじゃない。
ちょ、待て、話せば分(ry


>>sk さん
スカーレットの元ネタは、宿主を操る寄生虫でした。
カタツムリの一種に寄生して、鳥に自分を食べさせるために目立つ場所に移動させるという・・・恐ろしい。

詳しくはこちらを参照して下さい。↓
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070106_leucochloridium/
ただし、結構グロいので要注意。自己責任で。

キノコの一種である冬虫夏草の仲間には、蟻に寄生して成長に適した場所まで誘導する奴もいるとか。
この辺から色々と妄想して、スカーレットが出来たのでした。


>>ヒデ さん
さて、どうでしょう?w
恵美の扱いは三つほど考えてます。
ただ、最初の頃の考えとは、どれも全く違う物になりそうです。
こういう結果の可能性が出てくること自体、想定していませんでした。

そのために、流用できそうなネタを頭の中から色々引っ張り出してますw
2009/03/10(Tue) 23:33 | URL | HEKS | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック