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インターミッション―1 『白銀(しろがね)の守護者』―2

「コホッ・・・埃っぽいわね、まったく・・・」

 顔をしかめた後、少女はポケットから小さな人形を取り出した。
 大きさは十センチも無く、大理石のような質感だ。例えるならチェスの駒が一番近い。ファンタジーゲームに出てくる狩人のように、弓に矢をつがえて獲物を狙っている姿をしていた。

 人形を床に置き、また、少女が何かを呟く。
 カタカタカタ・・・と、人形が身震いした。

「秘薬と秘本が隠されていた場所はどこ?」

 ピキ、パキ、と亀裂が入るような音が人形からすると、石のような人形の体が動き始めた。
 両足を広げ、弓を持ち上げて狙いを定めると、引き絞った矢を天井めがけて放った!

 矢の行く先を見届けると、少女は人形を掴んで床を蹴った。
 常識では考えられない跳躍で一気に天井の梁に手を掛けると、ひょいっと体を持ち上げて梁の上に立ち上がる。
 先程の屋根の上からの着地といい、完全に重力を無視していた。

 矢の刺さった箇所は、梁に繋がった柱の上部であった。
 柱から矢を引き抜き、人形に手渡す。人形は矢を受け取ると、元の矢をつがえた状態に戻ってその動きを止めた。

「ありがとう」

 人形に礼を言う彼女の顔には、優しい微笑が浮かんでいた。
 この人形は失せ物を探すために彼女が創った物で、『無垢なる狩人』と呼んでいた。
 直径十~三十メートル程度の空間内ならば、使用者の求める物を間違いなく探し出してそこに向かって矢を放ち、場所を教えてくれる。もしも求める物が無いならば、矢を放つ事はない。
 ただし、放たれた矢はすぐに人形に戻さなければならない。見失ったりして紛失すると、三十分程度で人形と矢は砂と化して滅びてしまうのだ。

 人形をポケットに戻し、柱を丹念に調べると、隠されていた白木の箱を発見した。
 箱を開けて見たが、当然、何も無い。
 分かっていた事ではあったが、少女は落胆の表情を隠せなかった。
 が、すぐに顔を引き締めると、胸元から小さな石が付いたペンダントを取り出した。

 蜂蜜のような色をした、直径約一センチほどの丸い石だ。その中心には猫の目のような線が入っている。
 キャッツアイと呼ばれる宝石のようだが、通常のキャッツアイの目と違い、この宝石の目は血のような赤い色をしていた。

 それを両手で覆うように軽く握り締め、手の中の宝石に息を吹きかけるように手を唇に当て、また小さく呟いた。

 組み合わされた手の平の隙間から、光が漏れ出した。
 否、それは光ではなかった。
 それは光を放ちながら少女の手の中から溢れ出る『液体』であった。

 溶けた金属のような光沢から鈍い光を放ちつつ、まるで触手のように宙に伸び、その大きさを増していく。
 時間にして十秒足らずの間に、少女の手から伸びた金属質の液体は直径一メートルほどの大きな円盤を形作っていた。

 眼前に直立した円盤の表面を凝視していると、そこに波紋が広がり・・・一人の少年の姿が浮かび上がった。
 自分よりも少し年上らしいその少年は、白木の箱の中から古びた本を取り出して手の中のガラスの小瓶を眺めていた。

「こいつか・・・! フン、あまり賢そうじゃないわね。お父様の足元にも及ばないわ」

 角度的に小瓶の中身は見えなかったが、本の表紙の文字は読み取る事が出来た。『運命改変薬秘伝』・・・日本語は分からないので、その文字と少年の顔を目に焼き付けた。
 もっとも、この『盲目の水銀鏡』は一度映し出した映像を記録しておく事が出来るので、また見ればいいだけなのだが。

 これもまた、彼女の家に伝わる秘具だ。
 赤い瞳のキャッツアイから溢れ出す液体のような金属は鏡を作り出し、その場の過去の映像を映し出す事ができるのだ。
 離れた場所を見ることはできず、目前の二~三メートルほどの空間に限定されるが、過去二、三年の出来事ならば鮮明に映し出す。
 ただし、それ以上遡って見ようとすると力を使いすぎる為に宝石は壊れてしまう。最大の欠点は、使用中の人間は完全に無防備になる事だ。

 それ故に、彼女はいつの間にか背後に忍び寄っていた人物に気付かなかったのだ。

 背後の人影は一声も発せずに、水銀鏡に映し出された少年をじっと見つめている。
 と、映像が波紋に掻き消され、金属質の液体は少女の手の中に音も立てずに戻っていった。完全に手の中に消えた後に両手を広げると、宝石は変わらぬ赤い瞳で少女を見つめていた。

「・・・フゥ。よし、後はあの間抜けそうな男を調べれば、秘薬と秘本を手に入れられそうね。きっとお父様も喜んでくださるわ。フフッ、多少手荒い真似をしてでも・・・」
「手荒い真似をするというのなら、阻止させてもらいます」
「っ!?」

 振り返った少女の背後、梁の上に直立して佇む白い人影を驚愕の瞳で見た。

「誰っ!?」
「それをあなたに言う必要はありません」

 薄暗い土蔵の中、金髪の少女と対峙した人物は女だった。
 少女の金髪と相反するかのように、窓から差し込む月光が彼女の白銀の髪を照らしている。その瞳の色もまた、白銀であった。
 何よりも目を惹いたのは、何も纏っていない雪のように白い肌。
 一糸纏わぬ全裸だったのだ。

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
あの。。。
《官能小説》って何?
っぽいのは、15話中 今、何話あったの?
2008/02/02(Sat) 06:56 | URL | yu-ki | 【編集
コメントありがとうございます
>>yu-ki さん
申し訳ない。仰るとおり、まだH度超低いです。
その辺についてはまず第二章で集中的にやる予定になっています。
今日のアップでインターミッション1が終わりましたので、次回から第二章に入ります。
だもんで、もうちょっとお待ちくださればありがたいです。
2008/02/03(Sun) 23:54 | URL | HEKS | 【編集
ありがとうございます
不躾なレスに真摯なコメントありがとうございます。
今後もずっと楽しみにしています♪
2008/02/04(Mon) 00:27 | URL | yu-ki | 【編集
コメントありがとうございます
>>yu-ki さん
>>不躾なレスに・・・

いえいえ、お気になさらずに。
こういったきびし目のご意見も、貴重なのです。
突っ込みたい事があったら、コメントでもメールフォームでも構いませんので突っ込んでくださいな。
2008/02/06(Wed) 00:53 | URL | HEKS | 【編集
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