2ntブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ハーレム・ドラッグ第二章―11
 俺のバイトは某大手チェーンの牛丼屋だ。
 何故このバイトを選んだのかと聞かれれば簡単、まかないが出るから。
 完全無料ではないけど、なんと店のメニューが全品七割引になるのだ。普段からありがたく利用させていただいている。
 でも、今日は桐山が作ってくれるので必要ない。バイトが終わった俺は挨拶をしてそのまま帰ろうとした。

「あら? 後藤君、今日は持ち帰りしないの?」

 一緒に働いているパートの清水さんが声をかけてきた。
 清水さんはれっきとした主婦だが、家計の足しにとここで働いている。
 確か三十歳と聞いた事があるが、とてもそうは見えない。目じりの泣きボクロがチャームポイントの、実にお美しいご婦人である。
 この店の常連客の大半は、清水さんが目当てで通っていると思うね。

「ええ、今日はちょっと・・・」
「あら~? もしかして・・・」

 清水さんが店の外に目をやった。
 あう、桐山さんが既に到着しておられるではないか。

「あの子が彼女? 綺麗な子ねぇ~。このままデート? それとも夕食を作ってもらうとか? 若いっていいわねぇ~」
「い、いや、その・・・し、清水さんだって十分若いじゃないですか。最初に見たとき、女子大生かと思いましたよ」

 話を逸らして誤魔化そうとする俺をニッコリと見つめてくる。
 駄目だ。見透かされてるな、こりゃ。

「ふふ、ありがとう。もし女の子の事で相談したい事があったら、遠慮なく聞いて頂戴ね。後藤君ならいつでも相談に乗るわよ」

 ・・・う、何か妙に目付きが艶かしい。
 腰の辺りから力が抜けそうな、熱い色気を感じる。

「あ、あははは、その時はよろしくお願いします」
「ええ、またね」

 俺はちょっとよろけながら店を後にした。
 うーん、彼女にも改変薬の効果が出てるのかな・・・。
 そのうち、桐山たちのように迫ってきたりするんだろうか。

 ・・・人妻・・・何だよな。
 い、いかん、目くるめく官能の世界が脳内で展開しそうだ。
 ええい、その時はその時だ! なるようになるさ!


「よう、桐山。待たせたな」
「お疲れ様」

 桐山と合流した俺は、二人並んでアパートに向かった。
 何となくぎこちなくて会話はあまり無い。
 と、その雰囲気を破るように桐山が言ってきた。

「ご、後藤・・・。あの、さ・・・」
「んっ? 何だ?」
「手・・・つないで良い・・・?」
「あ・・・ああ、別にいいぜ」

 桐山がそ~~っと俺の手を握ってきた。
 俺よりもちょっと高めの体温が、手の平から伝わってくる。
 桐山は俯き加減なので顔が見えないが、耳が真っ赤になっていらっしゃる。
 俺も顔が熱い。
 周りから見れば、実に初々しい高校生カップルに見えるだろうなぁ。

「・・・くふ」
「?」
「く、くふふ、うひゅふふふふふ」

 突然、桐山が俯いたままおかしな声を出した。
 声っていうか・・・笑ってるのか?
 ちょっと怖いぞ。

「・・・あの、桐山さん?」
「ああ~~~! ダメだぁ~~~! 顔がニヤけるぅ~~!!」

 ぱっと俺に顔を向けた彼女は、蕩けた笑顔で幸せそうに笑っていた。
 その背後に色とりどりの花が咲くのと、瞳の中に無数の星たちが煌めくのが見えたぞ。

「ど・・・どうした?」
「私さぁ~~、こうやって、好きな人と手ぇつないで歩くのって・・・夢だったんだぁ~~!」

 握った俺の手をぶんぶん振り回し、体をくねらせ、全身で幸せを表現しておられる。
 ・・・なんと言うか、こーいう桐山は初めてだな。
 勿論、悪い気はしない。こんな幸せそうな笑顔を見せられたんじゃ、こっちも嬉しくなる。

「そっ・・・か。でも、今まで付き合った奴とか居ないのか? お前なら相手を選びたい放題だろう」
「ん~~~・・・それが、男友達のレベルから越えた男って今まで居なかったんだよねぇ・・・後藤以外は」
「俺を気に入った理由って、公園で助太刀したからか?」
「うん。それに、私から一本取ったのも、同年代の男で後藤だけなんだよ?」
「桐山の家で稽古相手をした時の事か。まぐれで胴一本取ったっけな」
「あの時、私は油断は・・・多少してた。でも、後藤の最後の動きは予測できてた。完全に対処できる筈だった・・・それが出来なかった」
「・・・たまたまだろ」

 桐山は軽く頭を振って、俺の言葉を否定した。

「あの時の後藤はね、ほんの一瞬だけど、全てにおいて私を上回ったのよ。物心ついた時から竹刀と防具で遊んでた私を、未経験の後藤が超えた。不思議と悔しくは無かったよ・・・それよりも嬉しかった」
「嬉しかった? 俺がお前を一瞬でも上回ったのが?」
「私さ、あんまり怒られた事って無いんだ」
「は?」

 何か話が飛んだ気がするぞ。

「武道ってのは『礼』を重んじるから、自然と私も『悪い事をあんまりしない良い子』になってたんだ。だから、親や先生に怒られた事ってあんまり無いの。同時にちょっとばかり自惚れてた、自分の強さにさ。公園の一件・・・正直言って、怖かったよ」
「・・・・・・」

 無理もないな。相手は五人、しかもナイフまで出してたんだ。
 桐山も木刀を持ってたけど、それでも怖いよな。
 俺は取りあえず、このまま桐山の言葉を聞く事にした。

「後藤が助けに入ってくれて、本当に嬉しかった。それから、私を怒鳴りつけて叱ってくれた事も嬉しかった。『自惚れてんじゃねえ!』ってガツンとやられた感じがしたよ」

 俺があの時桐山を怒鳴りつけたのは、彼女の無用心さに腹が立ったせいなのだが・・・。そうか、その無用心さの原因が自分の強さに『自惚れてた』からって訳か。

「止めが、あの『胴一本』・・・! 同年代の男の子で、心も、体も、私よりも上の人に巡り会えた・・・嬉しかった。そう思いついた時には、後藤の事が好きになってたよ」
「・・・正直、買いかぶり過ぎだと思うがなぁ。俺はそんな大層な人間じゃないぜ?」

 本心からそう思う。
 今なら、体の方は改変薬の力で強化されたから、桐山と勝負しても前回よりマシに戦えるだろうけどさ。

「後藤はね、自分でも気付いてないみたいだけど、『天賦の才』って奴を持ってると思う。それはきっと、私なんか足元にも及ばない、強い力だよ」

 桐山は、俺を見つめて言い切った。
 穏やかな、それでいて確信を秘めた真剣な瞳に、俺は言葉を返す事が出来なかった。

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
拍手コメントにも書きましたが桐山萌え
変な笑い方とかツボすぎるw
続きに期待してます
2008/04/23(Wed) 21:54 | URL |  | 【編集
コメントありがとうございます
>>名無し さん
桐山は凛々しい性格をしてますが、惚れた男に対してはデレの度合いが強く出るのです。
恋愛の経験が皆無なので、愛情表現が変な笑い方とかになるのですw
2008/04/24(Thu) 18:18 | URL | HEKS | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック