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ハーレム・ドラッグ第三章―4
 俺の左手から、再び光が放たれて蛇が現れる。
 ただし、今度は青白くない・・・白と黒の光だ。
 ランダムに入り混じった白と黒の蛇が左手から飛び出し、周囲を暴れまわる。
 そのうち蛇はドーム状に俺達を包み込み、氷室たちと遮断した。
 魔方陣というか、魔法円のような感じだ。
 模様の隙間から、氷室たちの姿が見える。

「ちょ・・・ちょっと、何よこれ・・・。こんな力があるなんて聞いてないわよ!? ロイド、分析できる!?」
 ドームの外側から氷室の声が聞こえてきた。
 ロイドの目にあたる部分が赤く光り、すぐに返事が戻る。

「赤外線、磁力線、放射線、光、温度、湿度、電気、振動、その他、全てのセンサーに、反応無し。測定不能」
「な・・・!?」
「推測で、いいのなら、説明は、可能」
「いいわ」
「あの、ドームの中は、別世界に、なった」
「別世界・・・?」

 ご名答だぜ、ロイド。
 この中は、俺が蛇の力で作り上げた『平行宇宙』だ。

「エネルギーの、流れが、あの中で、輪になって、再生と消滅を、無限に、繰り返して、いる」
「無限の、再生と消滅・・・? それじゃあまるで、あの蛇の事じゃない・・・!」
「推測名、『ウロボロス』」

 始まりも終わりも無い、完全なもの・・・ウロボロス。
 自分の尾を飲み込む蛇の姿で表される、死と再生・破壊と創造・永遠などの象徴。
 そう、この白と黒の光の蛇は、俺が擬似的に作り上げたウロボロスそのものだ。
 俺はこいつを作り上げる為に、百合香たちを助けた善行のエネルギーを利用した。

 当然、まだ助けていないんだからエネルギーは無い。
 だが、『未来』にはある。
 俺は未来に発生するエネルギーを餌に使い、『干渉と改変の蛇』を『前倒し』で強制発動させたのだ。
 そして、更に蛇を強制的に『逆行』させて引き戻した。

 それを『輪』にして、無限にエネルギーを使い、無限にエネルギーを復活させる永続空間を作り上げたのだ。
 百合香たちを助ける為に、百合香たちを助けた善行のエネルギーを使う・・・。
 未来から過去に影響を与えるのではなく、その力そのものを『逆』に発動させて作り上げた、『擬似ウロボロス』・・・時間も概念も無視しまくった、強引な裏技だ。

 『過去』に発生したエネルギーを使うことも考えたが、一度特定の目的に使ったエネルギーを使うのは不安があったのでやめておいた。
 過去の事象がおかしくなる可能性があるからだ。
 未来のエネルギーならその辺は安心だ。何せまだ『未使用』なんだから。
 失敗したらどうなるのか、恐怖もあった。
 ・・・だが、もうこれしか手は残っていなかったんだ。

 俺は百合香と本村さんたちに近づいて、体を蛇の力でスキャンする。
 本村さん夫婦は気を失っているだけだ、怪我も大した事はない。
 桃子ちゃんは・・・脳内で出血してる。意識不明なのはこのせいだったか。
 百合香も危険な状態だ。出血が多いせいか、体温がかなり下がっている。

 まず、治療をしなくちゃな。
 桃子ちゃんの脳内に漏れていた血を、綺麗にしてから体内に戻し、脳内出血を止めて死滅しかかっていた脳細胞を蘇生させる。
 百合香の方も同じだ、体外に流れ出した血を清浄化して戻し、損傷していた心臓や傷口を治す。
 ビデオの逆再生をしたように、二人の体は元通りになっていった。

 でも、これだけじゃ駄目なんだ。
 二人の『運命』を調べてみる・・・やっぱり、か。
 百合香がここで死に、桃子ちゃんが重度の障害を負う事になるのは、かなり強固な運命だったようだ。
 傷を治しただけでは、この運命は完全に消せない。
 この場を凌いでも、近いうちに再び二人は同様の運命に襲われる事になるだろう。

(検索、開始・・・!)

 無限・無数に広がる平行宇宙。その中から、今回の事件で百合香が死なず、桃子ちゃんも無事助かる運命の世界を探し出す。
 その世界の因果律をコピーし、こっちの百合香の因果律にペーストして上書き保存をするのだ。
 何だかパソコンのファイル操作みたいだが、これが一番分かりやすい考え方だろう。
 問題は、俺の体がどこまで持つかだ。
 ここまでの力の使用だけで、かなりガタが来ていた。

 右腕の穴同士が繋がるように筋肉が割れ、腕に亀裂が走っていく。
 折れた肋骨が右肺に刺さり、空気が抜けて萎んでしまった。
 足の関節の軟骨が潰れ、骨同士がゴリゴリと擦れて削れていく。
 左耳の鼓膜が破れた。
 視界の右半分がいきなり暗くなった・・・右の眼球が破裂したか。
 右目から溢れた熱い液体が顔を濡らす。
 無事なのは、蛇を発動させている左手くらいだ。
 痛みは感じない。
 今の俺は、ウロボロスの力を発生せて操る、制御機械のようなもんだ。
 制御の邪魔になる感覚は不要だ。

「な・・・何をしているの!? それ以上力を使ったら、あなた死ぬわよ!! もう止めなさい! あなたに死なれちゃ困るのよ!」

 氷室の声が耳に届く。
 だが、それは出ない相談だ。

(俺の体なんぞに、かまってられるか)

 検索のスピードを上げる。
 百・・・二百・・・三百・・・。
 四百の世界を調べ、ようやく探していた世界を見つけ出した。
 因果律をコピーし、こちらの世界の因果律に上書き保存。
 ・・・よし、完了だぜ。
 後は、あいつらをぶちのめすだけだ。
 ドームを作り上げていた蛇を左手に戻し、擬似ウロボロスを俺の左手だけに発生させる。
 周囲の世界が、元に戻った。

「無茶をするわね・・・! 死ぬのが怖くないの?」

 氷室が俺を睨みながら言う。

「そりゃ怖いさ。けどな、もう俺は嫌なんだよ、俺の身近な人間が辛い目にあったり、死んだりするのは。事故なら・・・まだ諦めもつく。けど、それが誰かの悪意で起こったことなら・・・。しかも元はといえば、俺を狙った事が原因なら、全力で抵抗してやる」

 俺も氷室を睨みながら言い切った。

「もう手加減無用ね・・・。スカーレット!」

 氷室の命令でスカーレットが大きく体を広げ、俺をすっぽりと包み込んだ。
 全身の傷口から何かが染み込んでくる・・・毒? こいつは・・・麻痺毒か。
 今度はロイドが、スカーレットの上からまとめて抱き抱えてきた。
 なるほど、生け捕りって魂胆か。

「このまま戻るわよ!」

 氷室の体が浮かび上がった。こいつも空を飛べるのか。
 スカーレットとロイドも俺を抱えたまま上昇していく。
 当然、大人しくしている義理はない。

「悪いけど、こんな色気のない夜間飛行はお断りだね」

 力を全身から軽く放射して、スカーレットを内側から破裂させた。

「ーーーーーーーッ!!」

 スカーレットが声の無い悲鳴を上げる。
 すかさず俺を締め上げるロイドの腕を左手で掴み、あっさりと引き剥がす。
 そのまま空中でロイドの巨体を振り回した。

「グ・・・ゴァ、ァァァッ!」

 加速のついた所で、上空の氷室目掛けてロイドをブン投げる!

「ぅおりゃっ!」
「わわっ!?」

 とっさに身をかわした氷室目掛け、蛇を放つ!

「くっ・・・!」

 氷室の体の前面に、複雑な模様の描かれた、円形に赤く光る盾が出現する。
 白と黒の光の蛇と、赤い光がぶつかり合い、一瞬の後に赤い光が砕かれた。
 蛇はそのまま驚く氷室の腹に直撃し、更に上空へその体を弾き飛ばした。

「ぐ・・・はっ!!」

 俺は地上三メートルほどの高さから着地する。
 俺の前に、散らばった体を集めて修復しているスカーレットがいた。
 こいつ、切ったり、千切ったりしてもあまり意味は無いみたいだな。
 その隣に、ロイドが地響きを立てて着地する。俺が掴んだ所が、手の形にへこんでいた。
 少し遅れて、氷室が地面に背中を叩きつけるようにして落ちてくる。

「うっ・・・ぐ、痛たた・・・」

 ゆっくりと立ち上がった氷室の服は、腹の所が俺の攻撃で破れていた。そこから、何か金属質の輝きが見える。

「念のために、オリハルコン製のボディアーマーを着込んでおいて正解だったわね・・・。まさか、これにヒビを入れるとは恐れいったわ・・・!」

 ボディーアーマーに、無数の亀裂が入っているのが分かった。蛇の直接攻撃を受けて致命傷にならなかったのはアレのせいか。
 氷室の目から、殺気が溢れる。・・・試合続行だな。
 今度は手足の一本や二本、失う事になっても知らねぇぞ。
 そう思いながら足を一歩踏み出す。
 氷室たちが身構えた。

 そのまま歩こうとして、俺は限界が来たのを悟った。
 ・・・体が動かない。
 今の攻撃で、すい臓と左側の腎臓が破裂したのが決定的だったか。
 痛みを感じない分、理解をするのが遅かった。
 せめて一撃を放とうと左手を動かそうとするが、こちらも動かない。
 俺の意思を無視して、唐突に擬似ウロボロスが消滅した。
 途端に襲い掛かってくる激痛。

「ぐぁっが、・・・が、はぁ・・・っ!」

 片肺が潰れているせいでろくに声が出ねぇ。
 痛みに脳が沸騰しそうになる。
 潰れた肺から、口の中に溢れてきた血をたまらずに吐き出す。
 俺の体は糸の切れた操り人形の様に、アスファルトの上に崩れ落ちた。

「・・・言わない事じゃない。無茶しすぎよ、孝一クン」

 氷室が俺に近づいて、上半身を優しく抱き上げた。
 妙に冷たい体の感触に逃げたくなったが、うめき声を上げるのがやっとだった。

「・・・でも、あなた素敵よ。好みのタイプ。ふふ、私のペットにしようと思ったけど、やめたわ。秘本を手に入れたら、ゆっくりと私のことを好きにさせてみせる。私を好きになってくれたら、どんな事でもしてあげるわ」

 氷室は、今までとは打って変わった優しい表情で俺を見つめていた。
 慈愛に満ちた笑顔、とでも言うのか。
 もしかしたら、これが氷室恵美の、人間としての表情なのかもしれない。

「う・・・。考ちゃん・・・?」

 百合香の声が聞こえた。気が付いたのか?

「考ちゃん・・・っ!? なに!? 考ちゃんに何をしてるの!?」

 顔を向けると、百合香が立ち上がる所だった。
 服は破れているが、体に異常は無いようだ。
 ってバカ! 大人しくしてろ!

「うるさいわねぇ、いい感じだったのに。彼、あなた達を助ける為にこうなったのよ、感謝する事ね」
「え・・・?」
「本当に素敵な子ね・・・。あなたには勿体ないから、私の物にする事に決めたわ」
「な、何を言って・・・!」

 氷室は悪戯っぽく笑うと、顔をゆっくりと俺に近づけて来た。

「えっ? なに、を・・・? ヤダ、やめて・・・!」

 百合香の声を無視して、氷室の唇が俺の唇に重なった。

「んっ・・・」
「・・・っ!! 考、ちゃ・・・!」

 氷室の舌が、力の入らない俺の口を割って侵入してくる。
 歯と歯茎を丹念に舐り、俺の舌を優しく愛撫する。
 口の中の血を、舌で舐め取るようにして飲み込んでいるようだ。

「ちゅ、ん、ちゅ、く、ちゅ・・・ふはぁ・・・。ふふ、美味しい血ね。少しは口の中が楽になったかしら」

 悔しいが、血でベトついていた口の中が少し楽になった。
 この女、本当に俺のことを気に入っちまったのか?

「さあ、引き上げよ。秘本の方は、体を治してから聞き出すからね。ロイド、彼を運んで。静かに、そーっとよ」
「分かった」

 ロイドが俺の体を持ち上げた。
 ゆっくりと上昇を開始していく。

「ま・・・、待って! 考ちゃんをどこに連れて行くの!?」
「彼の頑張りに免じて、あなた達は見逃してあげる。彼のことは忘れなさい」
「いや・・・! 返して! 考ちゃんを返してよ!!」

 霞む左目に映ったのは、数メートル下で泣きながら俺を呼ぶ百合香の姿。
 悲鳴のような百合香の叫びを耳にしても、今はどうすることも出来ない。
 ・・・まぁ仕方ねぇ。百合香たちが無事だっただけでも良しとするか。体さえ治れば、逃げ出すチャンスもあるだろう。
 夜空を見上げて、地上の光に負けてよく見えない星たちを見つめた。
 一際大きな星を見つけ、ぼんやりと眺める。
 それが段々大きくなることに気が付いたのは、その形が分かってからだった。

 その星は、人の姿をしていた。
 薄いグリーンのワンピースを着ていた。
 布面積が妙に少ない下着が丸見えだった。
 更に、雄叫びを上げていた。

「孝一お兄ちゃんを放しやがれぇぇぇぇっ!! このクズ鉄ーーーーっ!!」

 超上空からのキックが、俺の眼前をかすめてロイドの胸板に炸裂した!!
 破壊音と共にロイドの胸が大きく陥没し、衝撃で俺の体が空中に投げ出され・・・って、ちょっと!
 既に十メートル以上上昇していたんだ、落下したら間違いなく即死の自信があるぞ!
 が、次の瞬間に俺の体は誰かの腕に抱きしめられていた。

「孝一兄ちゃん、しっかり! もう大丈夫だよ!」

(空那・・・?)

 ロイドが地上に激突する轟音をバックに俺を抱いて地上に降りたのは、加納姉妹の妹、空那だった。
 ・・・って事は、まさかさっきのは・・・。
 空那の側に、ロイドを蹴り一発で撃墜した奴が降り立った。

「・・・よくも、あたしの『恋人』に好き勝手やってくれたなぁっ!! このキャバ嬢くずれのケバ女がぁっ!! クズ鉄と一緒にギタギタにしてスクラップ工場に放り込んでやるぁっ!! 隣のロープレ最弱キャラもどきも、逃がしゃしねーぞ、ゴルァ!!」

 ・・・・・・・・・・・・。
 何処かの暴走族の特攻隊長さんとか、ですか?

「えーっと、信じられないかも知れないけど・・・。お姉ちゃんだからね、この人」

 ・・・何か、見てはいけないものを見てしまったような気がする。

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
Re: ハーレム・ドラッグ第三章―4
お疲れ様です!これからもがんばってください!楽しみにしてます

風那ちゃんが狂戦士に・・・
2009/02/15(Sun) 17:07 | URL | ノスタル | 【編集
どうも~
まあどんな存在も最初から悪ではないからね。
最初から壊れてるとかならまだしも…ちょい氷室が好きになれました。
しかしライダーキック…いやスーパーイナズマキックか!?
一瞬ヒーローかと思ったがヤグザや…
さて彼女らの能力はどうなのか楽しみです。
あとある程度キャラや能力がでてきたらキャラ紹介的なので書いたほうが分かりやすくていいかも?
それでは~
2009/02/15(Sun) 19:52 | URL | ソウシ | 【編集
Re: ハーレム・ドラッグ第三章―4
敵の質問に(台詞でもモノローグでも)丁寧に答えるのは控えた方が。
初めて能力を前回で使うのだし、敵方の台詞にかまう余裕がないくらいにしたほうが緊迫感が出るかもなあと思いました。

氷室の台詞……たとえばオリハルコン製のボディアーマー云々の台詞も説明的すぎる気がします。
でもこの小説自体が孝一の一人称であるわけだし、孝一自体に知識がない以上台詞をある程度説明的にせざるを得ないとは思うのだけど……難しいですねえ。
2009/02/15(Sun) 20:14 | URL | クロガネ | 【編集
Re: ハーレム・ドラッグ第三章―4
なんとなく来てみたら更新してたーーーーww

お疲れ様です。


氷室フラグ・




ありですww
面白そうだww

しかし空那と風那・・・・・
そろそろ出てくるかなぁ、と思ってて出てきたはいいが・・・

なんか非行(飛行)少女になってるーーーーー(もう古いか?)


うだうだですみませんでしたww
これからもがんばってください、引き続き応援してますww
ではまた。
2009/02/15(Sun) 23:23 | URL | sk | 【編集
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009/02/19(Thu) 09:04 |  |  | 【編集
コメントありがとうございます
返信が遅れて申し訳ありません。
ここ二週間ほど、ほぼ不休で勤労に勤しんでおりました。
仮眠ぐらいとらせろ>>会社

以上、愚痴終了w


>>ノスタル さん
応援ありがとうございます。
狂戦士という表現はお見事w私も思いつきませんでしたw


>>ソウシ さん
さて、氷室は・・・中々(ピー)な事をやっており、次回分かる予定。
皆さんの評価がどうなるか、ちと怖いw
スーパーヒーローっていうか、スーパーヒロインっていうか、極道の娘というかw
加納家はヤクザ屋さんではありません、念のためw
キャラ紹介ページはいいですね。このブログでやるか、ぼちぼち作ろうかと思ってるまとめサイトでやるか、思案中です。


>>クロガネ さん
ああ、緊迫感を出すには確かにそっちの方が良かった!
説明とのバランスで苦労しています。
いやぁ、一人称って本当に難しい、『表現』が限定されるのがネックです。
一人称でヒット作を書かれた方達は、掛け値無しに『上手い』人達なんでしょうね・・・。


>>sk さん
氷室は怖い女なのですw
正直、私なら関わりたくないw
だって、ほにゃららされちゃうし。←次回判明予定w
>>非行(飛行)少女
うまいw座布団一枚w


>>名無し さん(管理人のみ閲覧できるコメントの場合、一応お名前を書かないようにしています)
そうですねえ・・・思案のしどころです。
以前から趣味で書いていた小説(未発表)は、全部こんな感じですw
今まで読んできた物の影響を、もっとも強く受けてると言えます。
場面ごとに切り替えるとか、研究・改良する必要がありますね・・・。

2009/02/21(Sat) 10:57 | URL | HEKS | 【編集
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