2ntブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ハーレム・ドラッグ第二章―31
「あなたたち・・・。昼間からなんて会話を・・・」
「あ、玲子先生」

 風那たちの来た方向から、さっきまで校舎を忙しく出入りしていた玲子先生が呆れた表情で現れた。

「先生、仕事終わったんですか?」
「ええ、あとは警察の方たちにお任せするしかないわ。本当に、大変な事が起きちゃったわね」

 玲子先生は溜め息混じりに言った。
 大分疲れてるみたいだな・・・無理も無いか。

「それよりも、皆揃って、こんな所で何をしているの? 野次馬に来たのなら早くお帰りなさい。マスコミの人達が生徒達にインタビューしまくってるから、捕まったら当分離してもらえないわよ」

 それは困る。
 昨夜の公園での出来事を聞かれたりして、ボロが出ないとも限らん。
 このままこの辺りをうろついていても、得られるもんは何も無さそうだし、帰るとするか。

「孝一くぅん? そーろそろ私の相手をして頂けませんかしらぁ?」

 一気に冷や汗が噴き出した。
 しまった、さつきの事を完全に失念していた・・・。
 そ~っと彼女の方を振り向くと・・・ニッコリと笑っていた。
 しかし、憤怒の形相をして俺を睨みつけている、不動明王の如きオーラを感じ、俺は思わず後ずさってしまった。
 俺の後ろの女性陣が息を呑む。
 くっついたままの夕紀の腕に力が篭った。うわ、夕紀でさえ顔が引きつっておりますよ。

「今日は暇になったんだから、うちの道場で一汗かいて行かない? 気分爽快にしてあげるわよ?」

 爽快になるのは、きっとお前だけだろ? 俺は内心呟いた。
 と、気がついた時には、俺はさつきに近寄られて肩にポン、と手を置かれていた。
 いつの間に近づいた!?
 武道の達人は、相手に気取られること無く間合いを詰める事ができると、さつきが前に言ってた事があったな。
 その当の本人に仕掛けられるとは・・・。

「い、いや、遠慮してお・・・」
「遠慮しなくていーわよ♪ 私と孝一の仲じゃない♪」

 ぐぎぎ、と肩に置かれた手に力が篭る。
 あのう、さつきさん? とっても痛いんですけど。

「来・る・よ・ね・?」

 さつきの声に重みが加わった。
 周りの連中に助けを求めようと、そっちを横目で見れば、少し離れた電柱の影から寄り添ってこちらを眺めていた。
 その中には、さっきまで俺の腕にくっ付いていたはずの夕紀までいた。
 この薄情者ーー!!

「しょうがないよね、桐山さんだけ一回じゃ怒るの無理ないよ」
「そうなの? 先生の時も一回だったけど」
「私たちが四回、麻生さんが六回だそうです」
「ふぅん。私の時は、彼は初めてだったせいか一回しか出来なかったのに・・・。この短期間に随分成長したのねぇ。んふ、先生の時が楽しみだわ」

 濡れた瞳で俺を見る玲子先生の視線は、背筋にゾクゾクと走るものがあった。
 即座に肩の痛みで消されたけど。

「決定ね。じゃ、行きましょうか♪」

 いや、返事は何もしておりませんが・・・。
 しかし、今のさつきに何を言っても無駄っぽい。
 あきらめてさつきに引っ張られるまま歩き出そうとした時、前から掛かった声は聞きなれたツンツンボイスだった。

「駄目よ、さつき。今日は私の番でしょ。そのバカ男は、今日は私のモノよ」

 おお! 篠宮ではないか!
 いつもの様に俺を見る目は小バカにした冷たいものだが、この際そんな小さな事には目をつぶろう!

「むぐ・・・百合香・・・」
「あなたのヤキモチ解消は、私の番が終わってからにして。それなら私は何も言わないから」
「むぅぅ・・・。分かった、今日は百合香の番だもんね」
「ありがとう、さつき」

 さつきが肩からやっと手を離してくれた。
 ふぅ、どうなる事かと思った。
 あのまま道場に連れて行かれてたら、絶対に真剣でなます切りにされていた所だ。
 今日ばかりは、篠宮が救いの女神に見えるぜ。
 篠宮は胸を撫で下ろした俺の前に大股で近づくと、俺の手を掴んで言った。

「ほら、いつまで間抜け面して突っ立てるのよ。行くわよ」
「え? ど、どこに・・・」

 そのまま俺を連れて行こうとする篠宮に、俺は慌てながら聞いた。

「いいから、あなたは大人しく私に従っていればいいの! 今日一日、あなたは私の所有物よ!」

 ・・・ハイ?
 いきなりのジャイ○ン的な私の物宣言に、俺の思考がしばし止まった。
 えーと、今日って、篠宮が俺とHをする日・・・だよな?
 立場が逆じゃねぇ?

「・・・何か文句があるの?」
「・・・ありません」

 ギロリ。そんな擬音が聞こえるような篠宮の目付き。
 刃のように鋭いさつきのや、瘴気を放つかのような夕紀のとも違う。
 有刺鉄線でがんじがらめにされる様な、体を麻痺させられて自由を奪われる様な、独特の視線だった。
 ギリシャ神話に、こんな目の力を持った女の魔物っていたよな。確かメデュー・・・。

「今、私を魔物みたいだ、なんて思ってない?」
「滅相もありません!! ささやかな誤解です!!」
「・・・ならいいわ、さっさと来なさい」

 び、敏感にも程がある・・・ほとんどテレパスだ。
 ズンズン進む篠宮は歩きながら携帯を取り出し、どこかに連絡をし始めた。

「藤堂? 車を回して頂戴」

 ・・・車?
 いぶかしんでいると、路地の出口に辿りついた俺たちの前に一台の黒塗りの高級車が止まり、運転席のドアが開いた。
 中から出てきたのは、髪の毛に白髪が混じり始めている、初老の男だった。
 黒いスーツをピシッと着こなした彼が、俺たちの側にやって来て深々と礼をする。
 ・・・誰ですか?

「お待ちしておりました、百合香お嬢様。ご用事はお済みに?」
「ええ。この男も連れて私のプライベートマンションに行くから」
「承知いたしました。後藤様でいらっしゃいますね? はじめまして、私、篠宮家で百合香お嬢様の身の回りのお世話をさせて頂いている、執事の藤堂と申します。以後お見知りおきを」
「は・・・はぁ・・・。こ、こちらこそ・・・」

 声にならねぇ、何だこれは。
 高級車のお出迎え? 執事? ぷらいべえとまんしょん?
 どこの別世界の話だこれは。

「どうぞ」
「ほら、行くわよ。グズグズしないでさっさと乗りなさい」

 藤堂さんが、後部座席のドアを開けながらまた深々と礼をする。
 車の中にさっさと入った篠宮に呼ばれ、俺も頭を下げつつ乗り込んだ。
 車内は脚を完全に伸ばすことが出来るくらいに異様に広く、目の前には液晶テレビやらBDプレイヤーやらが鎮座している。
 他にも小型冷蔵庫のような物だとか、備え付けのノートパソコンとかが効率よく収納してあった。
 更に驚いたのは、篠宮が手元のリモコンを操作すると、運転席の後部座席との間に下から壁が現れて、車内を分けてしまった。
 おまけに、後部、サイド、サンルーフのガラスがすぅっと白くなっていき、外の景色が見えなくなっちまった。
 走る密室の出来上がりだ。

「お嬢様、出発致します」
「ええ、お願い」

 どこかに仕込んであるインターフォン? から聞こえてきた藤堂さんの声に篠宮が答えると、車は静かに走り出した。
 エンジン音がまるで聞こえないし、振動もかなり抑えてあるようであまり感じない。
 半端な車じゃねーぞ、これ・・・。

テーマ:創作官能小説連載
ジャンル:アダルト
コメント
物語の主軸たる主人公が、ただ周囲に流されるだけだというのは実にもったいないかと。
現状では「ぬいぐるみと、それを取り合う女性たち」という感じに見えてしまいます。
ぬいぐるみのままで終わるのか、後藤孝一として自ら歩き出すのか、今後に期待です。

あくまでこちらの勝手な期待ですので、のびのびとやってほしいとも思いますが。
2008/09/07(Sun) 19:30 | URL | クロガネ | 【編集
コメントありがとうございます
>>クロガネ さん

鋭いご指摘、ありがとうございます。
確かに、今の孝一はぬいぐるみですね。

この話は孝一の成長物語でもあります。
今まで自力ではどうしようもない環境(両親と祖父の死、遺産相続、急な一人暮らし等)に振り回されてきている孝一は、ちょっと周りに流されやすくなってます。
そんな男が、急に桁外れの力を手に入れたらどうなるのか?
力に翻弄され、身を滅ぼすか。
力を制御し、自身の糧とするのか。
これからの孝一は、色々と苦労する事になるでしょう(今もしてるけどw)。

あと、ちゃんとのびのびとやっておりますよ~w
でも、趣味の延長とは言え、こうして公開して読んで下さっている人達がいるのですから、出来る限り皆さんの期待に答えられる様な面白い物を書きたいと思ってます。

心意気と腕前が釣り合ってませんけど・・・w
2008/09/08(Mon) 16:53 | URL | HEKS | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック