2008年07月16日 (水)
「ロイド! どうしてここに!?」
金髪娘が鎧野郎に駆け寄った。
これで金髪娘の味方=俺たちの敵確定だ。
金属同士が擦れるギリリ、という音をさせながら、ロイドと呼ばれた鎧野郎が金髪娘に顔を向けた。
「アイシャ、ここまでにする。ジェド様が、呼んでる」
「お父様が!?」
ロイドとやらのたどたどしい言葉に、アイシャと呼ばれた金髪娘は悔しそうに唇を噛んで俯いた。
金髪娘が鎧野郎に駆け寄った。
これで金髪娘の味方=俺たちの敵確定だ。
金属同士が擦れるギリリ、という音をさせながら、ロイドと呼ばれた鎧野郎が金髪娘に顔を向けた。
「アイシャ、ここまでにする。ジェド様が、呼んでる」
「お父様が!?」
ロイドとやらのたどたどしい言葉に、アイシャと呼ばれた金髪娘は悔しそうに唇を噛んで俯いた。
「逃がしませんよ」
白銀の少女が静かに言った。
何本にも分かれていた紅夜叉が一つにまとまり、大きな刃となってロイドを襲う!
「防ぐ事、無理、でも」
ガシャン! と音を立ててロイドの両肩の装甲が持ち上がった。
中には黒いスピーカーのような物が仕込まれている。
「結合、緩める、可能」
スピーカーのような物の色が、黒から金色に変わった!
キイィィィイイィイイィイイイイイイイン!!
これは・・・もの凄い高周波の音!? あのスピーカーみたいな物から出てるのか!?
金色菩薩に守られているお蔭か、俺にはさほど効いていないが・・・。
「ぅあっ!?」「ぐっ!?」
マズイ! 麻生たちには効果絶大だ! 二人とも耳を押さえて苦しそうに身をよじってる!
俺は二人のいる場所へ走った。
ありがたい事に、金色菩薩は俺の動きに合わせて後をついて来てくれてる。
最初に麻生を助け、動きを取り戻した彼女と一緒に白銀の少女の所へ駆け寄った。
その間も紅夜叉はロイドを切り裂こうとしていたが・・・。あの音を受けて、金縛りにあったようにその動きを止めている。
と、細かな赤い光がその表面に走ったと思った時。
パァァッ・・・と、桜吹雪のように紅夜叉が分解し、元の花びらへと戻ってしまった!
「箔同士の結合を強制的に解除されました・・・! あの武器は、『音』というより『振動』を破壊の力に変えているようです」
白銀の少女が少し苦しそうに言った。
その言葉に、金髪娘・・・アイシャが得意気に鼻で笑った。
「フフッ・・・。そうよ、この武器はオリハルコンを触媒に使った、『振動兵器』(バイブレーション・ウェポン)よ! フルパワーなら、分子間の結合すら破壊する。ロイドは只のゴーレムじゃない、最先端の科学技術と錬金術を組み合わせて私が創り上げた、ハイブリッド・ゴーレムよ。さすがに目立つから連れて来れなかったけど、それが最大の失敗だったわ」
科学技術と錬金術の融合作品かよ・・・。
バラバラにされて空中を漂っている紅夜叉の花びらは、それぞれどうしていいか分からずに迷っているような感じだ。
壊れたのか? 暫く使い物にならなそうだ。
こりゃ、ヤバいかな・・・形勢逆転だ。他にどんな能力を持っているのか分からない以上、逃げるのが得策なんだがそれを黙って見てる訳ねえよなぁ。
ロイドは肩の振動兵器で俺たちを釘付けにしている間に、離れた場所にあった公衆トイレに顔を向けた。
片手をトイレに向けると、腕の周囲からアンテナの骨組みのような細い金属棒が何本も飛び出した!
金属棒の先端から青白い稲妻が発生して腕に纏わりつき、全体を発光させていく・・・。
ゴゴン・・・!!
「何だ!?」
公衆トイレの方から、何かがぶっ壊れるような大きな音がし・・・え?
「せ、先輩・・・トイレが空に!」
麻生に言われるまでも無く、俺は破壊音を響かせて空に浮かび上がる公衆トイレを呆然と見上げていた。
公衆トイレといったって、大きさはマイクロバス二台分はある代物だぞ!?
そんなもんがゆっくりと空中に浮かび上がっていく光景なんざ、誰が想像できる!!
現実離れした光景を見ているうちに、ロイドはアイシャを抱きかかえて空にに浮かんでいた。
翼を出した訳でも、ロケットの様に火を噴いた訳でもない。本当に空中に『浮かび』上がってやがる。
振動兵器の音はいつの間にか止まっていて、紅夜叉も元の状態に戻っていたが、俺たちはそれにも気付かずに空の二人を見上げていた。
「ゴトウ・コーイチ! 必ずまた来るわ! それまでに秘本を用意しておきなさい! ロイド!」
ロイドは公衆トイレと同じ高さまで上昇し、アイシャは俺たちを見下ろして言い放つ。
ロイドが腕を振ると・・・浮かんでいたトイレが俺たちに向かって落下してきた!?
「先輩!」
麻生が俺を地面に押し倒し、上に覆いかぶさった。
俺は体の上下をひっくり返し、逆に麻生を守るように上に乗る。
「先輩!?」
「いいからジッとしてろ!」
「せん・・・」
ちっぽけながらも男の意地ってもんがある、守られっぱなしじゃ格好つかねえっての。
だが、俺の努力は幸いにも無駄に終わった。
「金剛・・・夜叉明王!!」
背後に聞こえた白銀の少女の声にそっちを見ると、彼女は俺たちを庇うように立っていた。
その眼前には、赤色と金色が規則正しく並んで作られた網のような物が広がっている・・・!
金色菩薩と紅夜叉が混じってる・・・?
あっという間に、その網はドーム型に俺たちを包み込んだ。
そして、トイレが俺たちの前の地面に激突し・・・轟音と振動。
網にトイレだった瓦礫がぶち当たっていくが、ビクともしない。不思議な事に、網の隙間から小さい破片すらも一切入ってこなかった。
お蔭で網の中の俺たちは、無傷で済んだ。
埃がおさまって空を見上げれば、ロイドとアイシャの姿は見えなくなっていた。
トイレは逃げる為の時間稼ぎか。俺たちがいた場所よりも大分前に落ちたから当てる気まではなかったんだろう。
・・・多分。
「まぁ、何とか助かったか・・・」
俺は安堵の溜め息を付いて周りを見回して・・・。
うわぁ・・・ぐっちゃぐちゃだ。
アイシャの光の剣でやられた芝生は茶色く枯れて、ロイドの落ちて来た地面は馬鹿でかい穴が開いてるし、公衆トイレは原形留めぬ瓦礫の山。
トイレのあった場所には、コンクリの基礎部が見える地面に水道管から噴き出した水が水溜りを作り始めていた。
「トイレ、せっかく新しくなったのになあ・・・」
俺は胸の中で、思わず公衆トイレに合掌してその冥福を祈ってしまった。
一回くらいは使ってみたかったな。
「孝一様」
「わっ!」
いきなり声を掛けられて驚いた。
っていうか、背後から、しかも耳元で声を出さんでくれ。
「彼女たちの飛び去っていく方角を確認しましたので、私は後を追って拠点としている所を突き止めます。確認次第、すぐに孝一様の元に参りますので」
「おい、一人で大丈夫なのかよ?」
「相手の力が未知数の状態で無理は致しません、ご安心を。・・・それと」
白銀の少女は俺にそう言うと、次は麻生に顔を向けた。
「別の襲撃者が来ないとも限りません。それまでは、あなたに孝一様の守護をお願い致したいのですが・・・よろしいですか?」
「勿論よ。先輩は私が守るわ」
麻生の微笑みに頷き返し、白銀の少女も真紅と金色の花びらを纏いながらジャンプし・・・こいつも飛んだ!?
どう見ても重力を無視してやがる。
これも錬金術か・・・凄いっつーか、恐ろしいっつーか・・・。
あ、そういや、名前も聞いてなかったな・・・。
何にせよ恩人である事に変わりは無い、戻ってきたらよく礼を言わなきゃな。
他にも、色々と聞かなきゃならんな。
「・・・? 先輩、何か近づいてきますよ?」
麻生が耳に手を当てている。
俺も耳をすましてみた。
「何かって・・・これ、サイレンの音・・・? パトカーか!?」
ヤバイ! 誰かが通報でもしたか? こんなとこ見られたらどう説明しても乱闘騒ぎプラス、公園破壊の当事者だ!
いやまぁ当事者だけど! こんな特撮じみたバトルの説明なんて出来ないし、しても信じて貰える訳がねぇ。
「あ、麻生、とにかく逃げるぞ!」
「はい!」
俺は麻生と一緒に大急ぎで公園を脱出し、やっとの思いでアパートに帰ってきた。
時間にして一時間程度の事だったが、いやはや、心底疲れた。
それに、麻生になんて説明したもんかねぇ・・・。
こんな事になった以上、麻生には正直に言った方が良いのかも知れんが・・・。やれやれ、頭が痛くなってきたぜ。
白銀の少女が静かに言った。
何本にも分かれていた紅夜叉が一つにまとまり、大きな刃となってロイドを襲う!
「防ぐ事、無理、でも」
ガシャン! と音を立ててロイドの両肩の装甲が持ち上がった。
中には黒いスピーカーのような物が仕込まれている。
「結合、緩める、可能」
スピーカーのような物の色が、黒から金色に変わった!
キイィィィイイィイイィイイイイイイイン!!
これは・・・もの凄い高周波の音!? あのスピーカーみたいな物から出てるのか!?
金色菩薩に守られているお蔭か、俺にはさほど効いていないが・・・。
「ぅあっ!?」「ぐっ!?」
マズイ! 麻生たちには効果絶大だ! 二人とも耳を押さえて苦しそうに身をよじってる!
俺は二人のいる場所へ走った。
ありがたい事に、金色菩薩は俺の動きに合わせて後をついて来てくれてる。
最初に麻生を助け、動きを取り戻した彼女と一緒に白銀の少女の所へ駆け寄った。
その間も紅夜叉はロイドを切り裂こうとしていたが・・・。あの音を受けて、金縛りにあったようにその動きを止めている。
と、細かな赤い光がその表面に走ったと思った時。
パァァッ・・・と、桜吹雪のように紅夜叉が分解し、元の花びらへと戻ってしまった!
「箔同士の結合を強制的に解除されました・・・! あの武器は、『音』というより『振動』を破壊の力に変えているようです」
白銀の少女が少し苦しそうに言った。
その言葉に、金髪娘・・・アイシャが得意気に鼻で笑った。
「フフッ・・・。そうよ、この武器はオリハルコンを触媒に使った、『振動兵器』(バイブレーション・ウェポン)よ! フルパワーなら、分子間の結合すら破壊する。ロイドは只のゴーレムじゃない、最先端の科学技術と錬金術を組み合わせて私が創り上げた、ハイブリッド・ゴーレムよ。さすがに目立つから連れて来れなかったけど、それが最大の失敗だったわ」
科学技術と錬金術の融合作品かよ・・・。
バラバラにされて空中を漂っている紅夜叉の花びらは、それぞれどうしていいか分からずに迷っているような感じだ。
壊れたのか? 暫く使い物にならなそうだ。
こりゃ、ヤバいかな・・・形勢逆転だ。他にどんな能力を持っているのか分からない以上、逃げるのが得策なんだがそれを黙って見てる訳ねえよなぁ。
ロイドは肩の振動兵器で俺たちを釘付けにしている間に、離れた場所にあった公衆トイレに顔を向けた。
片手をトイレに向けると、腕の周囲からアンテナの骨組みのような細い金属棒が何本も飛び出した!
金属棒の先端から青白い稲妻が発生して腕に纏わりつき、全体を発光させていく・・・。
ゴゴン・・・!!
「何だ!?」
公衆トイレの方から、何かがぶっ壊れるような大きな音がし・・・え?
「せ、先輩・・・トイレが空に!」
麻生に言われるまでも無く、俺は破壊音を響かせて空に浮かび上がる公衆トイレを呆然と見上げていた。
公衆トイレといったって、大きさはマイクロバス二台分はある代物だぞ!?
そんなもんがゆっくりと空中に浮かび上がっていく光景なんざ、誰が想像できる!!
現実離れした光景を見ているうちに、ロイドはアイシャを抱きかかえて空にに浮かんでいた。
翼を出した訳でも、ロケットの様に火を噴いた訳でもない。本当に空中に『浮かび』上がってやがる。
振動兵器の音はいつの間にか止まっていて、紅夜叉も元の状態に戻っていたが、俺たちはそれにも気付かずに空の二人を見上げていた。
「ゴトウ・コーイチ! 必ずまた来るわ! それまでに秘本を用意しておきなさい! ロイド!」
ロイドは公衆トイレと同じ高さまで上昇し、アイシャは俺たちを見下ろして言い放つ。
ロイドが腕を振ると・・・浮かんでいたトイレが俺たちに向かって落下してきた!?
「先輩!」
麻生が俺を地面に押し倒し、上に覆いかぶさった。
俺は体の上下をひっくり返し、逆に麻生を守るように上に乗る。
「先輩!?」
「いいからジッとしてろ!」
「せん・・・」
ちっぽけながらも男の意地ってもんがある、守られっぱなしじゃ格好つかねえっての。
だが、俺の努力は幸いにも無駄に終わった。
「金剛・・・夜叉明王!!」
背後に聞こえた白銀の少女の声にそっちを見ると、彼女は俺たちを庇うように立っていた。
その眼前には、赤色と金色が規則正しく並んで作られた網のような物が広がっている・・・!
金色菩薩と紅夜叉が混じってる・・・?
あっという間に、その網はドーム型に俺たちを包み込んだ。
そして、トイレが俺たちの前の地面に激突し・・・轟音と振動。
網にトイレだった瓦礫がぶち当たっていくが、ビクともしない。不思議な事に、網の隙間から小さい破片すらも一切入ってこなかった。
お蔭で網の中の俺たちは、無傷で済んだ。
埃がおさまって空を見上げれば、ロイドとアイシャの姿は見えなくなっていた。
トイレは逃げる為の時間稼ぎか。俺たちがいた場所よりも大分前に落ちたから当てる気まではなかったんだろう。
・・・多分。
「まぁ、何とか助かったか・・・」
俺は安堵の溜め息を付いて周りを見回して・・・。
うわぁ・・・ぐっちゃぐちゃだ。
アイシャの光の剣でやられた芝生は茶色く枯れて、ロイドの落ちて来た地面は馬鹿でかい穴が開いてるし、公衆トイレは原形留めぬ瓦礫の山。
トイレのあった場所には、コンクリの基礎部が見える地面に水道管から噴き出した水が水溜りを作り始めていた。
「トイレ、せっかく新しくなったのになあ・・・」
俺は胸の中で、思わず公衆トイレに合掌してその冥福を祈ってしまった。
一回くらいは使ってみたかったな。
「孝一様」
「わっ!」
いきなり声を掛けられて驚いた。
っていうか、背後から、しかも耳元で声を出さんでくれ。
「彼女たちの飛び去っていく方角を確認しましたので、私は後を追って拠点としている所を突き止めます。確認次第、すぐに孝一様の元に参りますので」
「おい、一人で大丈夫なのかよ?」
「相手の力が未知数の状態で無理は致しません、ご安心を。・・・それと」
白銀の少女は俺にそう言うと、次は麻生に顔を向けた。
「別の襲撃者が来ないとも限りません。それまでは、あなたに孝一様の守護をお願い致したいのですが・・・よろしいですか?」
「勿論よ。先輩は私が守るわ」
麻生の微笑みに頷き返し、白銀の少女も真紅と金色の花びらを纏いながらジャンプし・・・こいつも飛んだ!?
どう見ても重力を無視してやがる。
これも錬金術か・・・凄いっつーか、恐ろしいっつーか・・・。
あ、そういや、名前も聞いてなかったな・・・。
何にせよ恩人である事に変わりは無い、戻ってきたらよく礼を言わなきゃな。
他にも、色々と聞かなきゃならんな。
「・・・? 先輩、何か近づいてきますよ?」
麻生が耳に手を当てている。
俺も耳をすましてみた。
「何かって・・・これ、サイレンの音・・・? パトカーか!?」
ヤバイ! 誰かが通報でもしたか? こんなとこ見られたらどう説明しても乱闘騒ぎプラス、公園破壊の当事者だ!
いやまぁ当事者だけど! こんな特撮じみたバトルの説明なんて出来ないし、しても信じて貰える訳がねぇ。
「あ、麻生、とにかく逃げるぞ!」
「はい!」
俺は麻生と一緒に大急ぎで公園を脱出し、やっとの思いでアパートに帰ってきた。
時間にして一時間程度の事だったが、いやはや、心底疲れた。
それに、麻生になんて説明したもんかねぇ・・・。
こんな事になった以上、麻生には正直に言った方が良いのかも知れんが・・・。やれやれ、頭が痛くなってきたぜ。
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